プランツ
〜ビトルの場合〜
モウスグ…アトスコシ… 私はビトル。ビトル・エドーアダ。 父上と母上の最後の息子。末っ子というヤツだ。 父上は私が十の時に亡くなった。その時の事は今でもよく覚えている。 レティ姉上を始めとする大勢の「子供たち」が父上のベッドを囲んでいた。 そして父上に一番近い所には、老いを知らぬ姿をした母上が。 私たちは夜更けと共に二人の部屋を去った。 だから父上と母上が最期に何を語らったのか、私は知らない。 誰もが眠れぬ夜を過ごした翌朝早く、メイドが駆け込んできて父上の死を告げた。 母上は泣き腫らした目で、それでも凛とした佇まいで私たちを迎えた。 その時の母上の空っぽの微笑みは、今でも瞼の裏に焼きついている。 一時は後を追うのでは、と囁かれていた母上も、一年、二年と経つ内に以前のような笑顔を取り戻していき、 周りを安堵させた。 しかし私が十九の年を迎えた頃、私は…私たちは、聞いてしまった。 何処か遠くで囁くように頭の中に響いたその声。 それが何を意味するのか、考えるまでも無かった。 私が母の居室へ駆けつけた時には、既にリーア姉上とラーフ姉上が幼子の様に母の膝に縋りつき、泣きじゃくっていた。 母上は何度も謝りながら、けれど穏やかな微笑を浮かべ、二人の頭を撫でていた。 私は無言で踵を返し、自室へ篭って泣いた。 父上が亡くなった時から、こうなる事はわかっていたのだ。 だから私たちは、翌日からはいつも通りに振舞った。 それくらいしか、私たちに出来ることはなかったのだ。 そして明日、私の成人の儀が執り行われる。 ***** プランツ子供編、末っ子のビトル話。 現在ルークと一緒に暮らしている子供はラーフ、リーア姉妹と未成年のビトルだけです。 |
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