アビドレ現代0.5−2
〜タルタロス〜





「ルーク、貴方のフルネームは?」

ジェイドが自分を見た。視線がぶつかる。透き通った赤の眼。
そういえば、初めてその目をちゃんと見た気がする。
ああ、そうだ。

うさぎみたいだ。

軍人らしからぬ白い肌、見るからに細くしなやかで、絡まることなど知らないだろう色素の薄い髪。
ずっと昔に本で見たうさぎという動物によく似ている。
あの絵のうさぎの眼もルビーのようで、それが純白に映えて、綺麗だった。
「ルーク?」
ティアに覗き込まれ、はっとする。
…何の話だったっけ?
すっかり呆けていたルークに、ジェイドはやれやれと肩を竦めた。
「私の美貌に見惚れるのは構いませんが、話はちゃんと聞いてくださいよ?」
だ・れ・が・だ!
あなたが、です。
………。
「もう一度聞きます。ルーク、貴方のフルネームは?」
ああ、そういえばそんなことを聞かれたような気もする。
いいか、よく聴きやがれ。


「――ルーク・フォン・ファブレ。お前らが誘拐に失敗した、ルーク様だよ」





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小話ジェイド編。イオン編よりかなり短いですね。
現代ルークはこの次点ではまだ創世暦時代の記憶はありませんが、思考パターンはそう変わりありません。
ルークは兎は図鑑や絵でしか見たことが無いので、兎=愛らしい動物、可愛い動物、という図式がありません。
本物の兎の動きとか見たことがあるのだったら多分、うさぎみたいだと思った次の瞬間には「このオッサンがうさぎ!!」と噴出して笑っていたことでしょう。(その後ジェイドにどんな嫌味を食らうかはともかく)








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