アビドレ現代0.5−2
〜タルタロス〜
「ルーク、貴方のフルネームは?」 ジェイドが自分を見た。視線がぶつかる。透き通った赤の眼。 そういえば、初めてその目をちゃんと見た気がする。 ああ、そうだ。 うさぎみたいだ。 軍人らしからぬ白い肌、見るからに細くしなやかで、絡まることなど知らないだろう色素の薄い髪。 ずっと昔に本で見たうさぎという動物によく似ている。 あの絵のうさぎの眼もルビーのようで、それが純白に映えて、綺麗だった。 「ルーク?」 ティアに覗き込まれ、はっとする。 …何の話だったっけ? すっかり呆けていたルークに、ジェイドはやれやれと肩を竦めた。 「私の美貌に見惚れるのは構いませんが、話はちゃんと聞いてくださいよ?」 だ・れ・が・だ! あなたが、です。 ………。 「もう一度聞きます。ルーク、貴方のフルネームは?」 ああ、そういえばそんなことを聞かれたような気もする。 いいか、よく聴きやがれ。 「――ルーク・フォン・ファブレ。お前らが誘拐に失敗した、ルーク様だよ」 ***** 小話ジェイド編。イオン編よりかなり短いですね。 現代ルークはこの次点ではまだ創世暦時代の記憶はありませんが、思考パターンはそう変わりありません。 ルークは兎は図鑑や絵でしか見たことが無いので、兎=愛らしい動物、可愛い動物、という図式がありません。 本物の兎の動きとか見たことがあるのだったら多分、うさぎみたいだと思った次の瞬間には「このオッサンがうさぎ!!」と噴出して笑っていたことでしょう。(その後ジェイドにどんな嫌味を食らうかはともかく) |
拍手ありがとうございましたvv