『楽園』の肖像
〜地核降下直前〜



青白く発光する巨大な人工の子宮。
ジェイドはその光の中から浮かび上がる少年へと訴えた。
「ルーク、貴方まで地核に沈むことは無い」
光に縁取られた少年は薄らと微笑んだ。
だけど俺は、と言いかけたルークをジェイドは手で制する。
「いいえ、ルーク。貴方はそこから出ることが出来ます」
その言葉に反応するように、ぽこり、ぽこりと気泡が立ち上っていく。
それに気付いたルークがジェイド、と彼の言葉を止めようとする。
しかしジェイドは言葉を続けた。
「プロテクトの所為で外からの干渉は一切出来ませんが、貴方自身が『エリス』のプログラムを
書き換えれば、貴方は再びこの世界に産まれる事が出来るはずです」
ぽこ、ぽこり、ぽこん…ぽこぽこ…
「もう少し確証を得てから、と思っていたのですがそうも言ってられなくなりました。
少々強引ですが、貴方はそこから出ることが出来るのです」
何処からともなく立ち上っていた気泡はあっという間にその数を増し、まるで沸騰しているようだった。
『エリスが怒ってる』
その様子にルークは困ったような笑みを浮かべて告げる。
『俺の事はいいから、ジェイドはもうココに来ちゃダメだ。エリスが凄く怒ってる』
「ルーク、貴方なら『エリス』を抑えられるはずです」
『ごめん、ジェイド…俺、エリスの傍に居てやりたいんだ。地核で一人ぼっちなんて、かわいそうだろ』
「『エリス』は管理プログラムです」
『違うよ、ジェイド。エリスにはちゃんと心があるんだよ。
エリスは寂しがりやだから、俺が傍に居てあげないと…。
ごめんな、ジェイド。ピオニー陛下にも伝えておいて。
ごめんなさい、ありがとうって』
「ルーク、待ちなさい、」
ルークの姿が気泡の向こうへと消えていく。
『ジェイド…大好きだよ…』
「ルーク!!」
己とルークを阻む音素壁へと手を伸ばせば、ばちりと耳障りな音と痛みに阻まれる。
ちっ、と彼にしては珍しく忌々しげに舌打ちして手を引いた。
「嫉妬に狂った女ほど醜悪なものは無い」
吐き捨てるように呟く。
しかし巨大な音機関は嘲笑うかのように一層輝きを増し、そして次第に明度を落としていった。
光を失っていく音機関。
ジェイドはそれに背を向け、部屋を出て行く。
「…私も貴方が好きですよ…ルーク…」
扉の閉じる瞬間に呟かれたそれは、しかし『女』によってルークに届くことは無かった。

そして少年は安らぎの眠りを求め、笑顔で堕ちてゆく。








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エルシリーズ。一気に地核ですよー。
基本的に思いついたところしか書く予定無いので。テヘ☆(殴)








拍手ありがとうございましたvv



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