『楽園』の肖像
〜その楽園の名は〜
| ジェイド、ジェイド!今、ぽこんってお腹蹴ったぜ! へへへ…男の子かな?女の子かな? あのさ、ジェイド。もし女の子だったら「エリス」って名づけても良いか? …えー!何でだよ!良い名前だと思うんだけどなあ…。 へ?何が?だってエリスはすっげ良い子だったぜ?へ?? んー…じゃあ「エル」は?なあ、良いだろ?なあってばー。 男の子だったらジェイドが決めていいからさ。な? なあってば。じぇーいーどーぉ!! 日当たりのよいリビングの床で、少女は上機嫌に画用紙に黄色のクレヨンを走らせていた。 大小さまざまな黄色い丸がひたすら画用紙一杯に描かれている。 それでも少女には意味のあるものなのだろう、熱心に幾つも幾つも黄色の丸を描いていた。 まるでそれは光の泡のようにも見える。 そして少女は満足げに黄色のクレヨンをケースに戻すと、今度は赤色のクレヨンを手に取った。 黄色の泡の中心に明確な意思を持ってその色は乗せられていく。 「エルー?エル、何処に居るんだ?」 母の呼び声に少女は手を止めて顔を上げた。 「ここよ、ママ!」 その声に導かれ、一人の女性がやってきた。 未だ少女のあどけなさを残したその女性は焔色の髪を揺らし、少女の元へと寄って来た。 「エル、パパ何処に行ったか知らないか?」 エルと呼ばれた少女はにっこりと笑って、大好きな母の問いかけに答えた。 「パパね、急にお仕事になっちゃったんだって。しばらく帰れないってママにつたえておいてって」 「えっ、そうなのか?本当に急だなぁ…でもいつもは俺に一言行って行くのに…」 「パパね、とっても急いでたの。だからよ。だいじょうぶよママ。 エルがパパの分もいっしょしてあげるから」 無邪気な笑顔で見上げてくる娘の頭を撫で、彼女も笑った。 「ありがとな、エル。よし、じゃあ今日の昼飯はエルの好きなチキンライスだ!」 「わぁい!エル、お手伝いする!」 「じゃあクレヨンお片付けして、手も洗っておいで」 「はぁい!」 キッチンへと向かう母の後姿を見送りながら、エルはくすくすと幼子らしからぬ笑みを浮かべて呟いた。 「今度こそ、ずっと一緒よ…ルーク…」 くすくすくす…… ――そして、幾度めかの楽園の扉が開かれる…… ***** エルシリーズ。最後までサンホラオチ。 ジェイドについてですが、本当に任務で出かけたのか、 エルが何かしたのかは特に決めてないのでご想像にお任せします。(爆) |
拍手ありがとうございましたvv