プランツ
〜四女・エルの場合〜


私はエル。エリューシャ・オニス。
え?フルネームで名乗れって?いいわよ。
私の名前はエリューシャ・オニス・キムラスカ・ランバルディア。
一年前にキムラスカ王家に嫁いだの。
だから兄弟の内で私だけ家名が違うの。お生憎様。
兄弟の内で私だけ既婚者というのも少し寂しい気がする。
レティお姉さまはいつになったら結婚に同意するのかしら。
ダアトで暮らすようになって、もう三年も経つのに。
やはり年の差が気になるのかしら?
でも導師イオンはプランツだもの。
一回り以上、というよりは二回り近く年が離れていた所で問題ないと思うのだけれど。
見た目は二十代前半のままなのだから。
丁度釣り合いが取れていいと思うのだけれど…。
それともこれからのことが心配なのかしら。
私たちはお母様の血のおかげで成長速度が普通の人と比べてゆっくりと過ぎていく。
けれど導師イオンは純粋なプランツ。
「大人」になることは出来ても「老いる」ことは出来ない。
彼らにとっての「老い」とは「枯れる」と同義であり、そして「枯れる」ことは死を意味する。
それでもレティお姉さまと導師イオンには幸せになってもらいたいものだわ。
リーアお姉さまとラーフお姉さまは…無理ね。ええ、見込み無し。
私たち家族以外であの二人の間に割って入れるような男はまず居ないわね。
たとえ居たとしても、そんな命知らずは即座に音譜帯の彼方ですもの。

え?手紙?ありがとう、下がって良いわ。
…お母様からだわ!ええと…?

…………。

……ええ、何となく、分かっていたの。
ええ、ええ!そうだろうと思っていましたわ!!

…何というか、私自身がもうすぐ子供を産むという時に、弟妹が増える知らせを受けるのって…
ちょっと複雑だわ。
ああ、でもよく考えてみればこのお腹の子とデファンは同い年になるのよね…。
…今更よね、ええ、今更だわ。
だってお母様はあんなに若々しいのですもの。
何も知らない人にお母様を指して「この人が私の母です」なんて紹介してもきっと信じてもらえないわ。
だって私とお母様が並ぶと年の近い姉妹にしか見えないんですもの。
お父様やアッシュ伯父様曰く、結婚当時から全く変わってないって。
見た目は勿論、中身も、ね。(笑)
お母様は変わらない。
けれど、お父様は違う。
確かにお父様は年齢にしてはとても若々しいけれど…
(二十歳くらいサバよんでも気付かれなさそう)
それでも少しずつ、確実にお年を召してゆく。
遠い未来、お父様がお亡くなりになったらお母様は…いえ、止しましょう。
わかってるわ、その先は。
お母様はお父様のために「大人」になったんですもの…。
「お父様には、長生きしていただかないとね」
うふふ…さあ、手紙のお返事を書かなくては。
何から書こうかしら?そうね…


“ご懐妊おめでとう御座います。
        私のお腹も大分大きくなって…”










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調子に乗ってプランツ子供ネタ。四女の巻。
とりあえず、イオンがプランツだということはあとがきで喋ったくらいでちゃんと書いてなかったので書いてみました。
デファンはエルたちの弟です。まだ生後8〜9ヶ月くらい?(曖昧)
子供の名前は大抵、聖書やサンスクリット、サンホラ(笑)、ヒンドゥー辺りの用語を捩ってつけてます。








拍手ありがとうございましたvv