『楽園』の肖像
〜魔界〜
タルタロスの艦内は壮絶なものだった。
無数の神託の盾兵の死体が横たわり、天井まで血で染まっている。 せめて艦橋とその周辺だけでも死体を片付けなければ。 戦力外のイオンとミュウ、そして意気消沈しているアッシュ以外の全員が無言でそれらを瘴気の海へと落としていく。 ここ以外の死体は後で始末するしかない。 愚図愚図していたら折角持ちこたえていたタルタロスの譜力が尽きてしまうかもしれない。 そして死体を片付け終わり、ジェイドが譜盤をあれこれ弄っていたが、どうやら落下のショックで指令系統にも問題があるらしく、タルタロスはその場から動こうとしなかった。 「どうにか直せないのか?」 ガイの問いかけにジェイドは暫く考え込んでいたが、やがて意を決したように傍らの伝声管の蓋を開けた。 「ルーク、聞こえますか、ルーク」 「ルーク」の名にガイが目を見開く。 「ルークが乗っているのか?!」 「説明は後です。…『ルーク』!」 するとジ、ジ、と羽虫のような音がしてモニターがぶれた。 『…ジェイド…?』 モニターのブレに連動するように微かに少年の声が聞こえた。 「ええ、そうです。よく、持ちこたえましたね」 そう応えるジェイドの声はどこか柔らかい。 『…ひさしぶり、ジェイド』 「お久しぶりです、『ルーク』。機関部に異常はありますか」 『少し泥が入り込んだけど、だいじょうぶ、まだいけるよ』 「譜盤がイカレているようです。『オランピア』と『コッペリア』に異常は」 『大丈夫。今は防御モードでここを守ってる。じゃあオランピアに「歌わせ」てコッペリアにバックアップさせるよ。それでいい?』 「ええ、方角は西。詳しい進路はまた追って連絡します」 『了解』 ぶつん、とモニターが暗転すると同時にぐらり、と艦が揺れた。 「な、何?」 驚いているアニスたちを尻目にジェイドはもう一度操作盤を弄ってみる。 すると何とかモニターは復活させることができ、辺りの状況を見渡すことが出来るようになった。 あたり一面紫の瘴気の海。 先ほどまで自分たちが居た地面も次第に泥に飲み込まれていく。 それを背後に、タルタロスはゆっくりと動き出した。 目指すは西。 監視者の街、ユリアシティ。 *** もう書くことは無いと思ってたのですが、リクエストがあったので書いてみました。 オランピアとコッペリアはエル機関の左右についてる球体の名前です。 |