いつわりの花園






張り詰めた糸は、いとも簡単に切れた。

「てめえ…コイツが、ルークが悪いって言いたいのか?!」
血腥い艦橋内にアッシュの怒声が響く。
「だってそうでしょ?!ルークが宿屋で大人しくしてればこんな事にならなかったかもしれないじゃん!!」
「アニス…!」
「イオン様は黙ってて!それにルークって総長のこと嫌ってたじゃない!知ってたんじゃないの?!総長が何をしようとしてるのか知ってたから嫌ってたんじゃないの?!」


「ルークは悪くねえ!!」


「全てヴァンがやった事だ!ルークはそれに利用されただけだろうが!!ルークは悪くねえ!!!」
ち、と舌打ちが微かに聞こえた。
ジェイドが立ち上がり、艦橋を出て行こうとする。
「ジェイド…!」
イオンがその背に声をかけるが、彼の歩みは止まらない。ただ苛立った応えだけが返ってきた。
「ここにいると馬鹿の発言にイライラさせられるのでね。失礼しますよ」
見えなくなる青い軍服。つられる様にアニスがイオンの手を引いた。
「イオン様、私たちも行きましょう。こんなサイテーなヤツに付き合ってられません」
「アニス、あなたまで…」
「いいから!」
こちらを何度も振り返るイオンを引きずるようにアニスも艦橋を出て行った。
ティアもちらりと視線をアッシュに向け、同じように出て行く。その視線は蔑みの色がちらついていた。
ガイが溜息を吐いて痒くも無い頭を掻いた。
「…あんまり幻滅させないでくれ」
呆れの色の濃いその声を残し、彼もまた去っていく。
「…アッシュ」
ナタリアがきゅっと胸元で手を握る。彼女らしくない、視線は足元を見ている。
「…わたくしは、アッシュもルークも大切です。その思いに変わりはありません。ですが…貴方は変わってしまった…」
悲しげな声を滲ませ、彼女も去っていった。
残されたのはミュウと四頭の幼ライガ。
そして一向に意識の戻らないルーク。
ただ拳を握り締めるしかないアッシュ。
「アッシュさん…」
ミュウが気遣わしげな声を出す。
「ミュウもライガさんのおうちを焼いてしまったですの。ミュウも…」
「てめえと一緒にすんじゃねえ!!」
弾ける様な怒声にミュウが小さくなり、ライガたちもびくりとして身を寄せ合う。
「みゅう…」
アッシュはそれらを無視し、シートの上でぐったりとしているルークを抱き上げた。
焔のような色合いを持つはずの少女の髪は、この薄暗い空の色の所為か、どこか暗い…自分の髪色に近い紅をしていた。
「ルーク…」
ぼろぼろのクローク。青白い顔。
体温の低いその身体を、アッシュはきつく抱きしめた。
首筋に顔を埋めると、土と埃の匂いの奥に甘い花の―ルークの、匂いがした。
「コイツは俺が守る…!俺が、俺だけが、俺だけがルークを守れるんだ!!」
「アッシュさん…」
ミュウが悲しそうな声で呼んだ。
ライガたちもきゅぅ、と切なげな声で哭く。
「俺だけだ…俺だけの…」


しかし彼には届かない。












***
プランツを書くに当たって絶対に言わせたかった台詞、その2。「ルークは悪くねえ」
あーそろそろゲーム進めないと…この辺既に記憶に無いです。(爆)
アッシュはゲームのルークとは逆で、アクゼを境に更におかしさに加速をかけていきます。まあこれも後々のぶっちゃけ話シーンのための複線なのですが。
ということでアッスは神経過敏なくらいでいきますよー。むしろキチな感じで。(笑)






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