いつわりの花園






簡単な事です。ルークが人見知りをしないからです。
プランツ並びにプラント…少女型しか存在しませんから「彼女」で纏めますが、彼女らは本来、人見知りが激しい。その度合いには個体差こそありますが、性格によっては主人以外の者が居る間は物陰に隠れて完全に出てこなくなる少女も少なくありません。
しかし、多少なりとも「育った」プランツはそれが薄れる傾向があります。
成長した事により、社交性が芽生えるのです。
その為、主人以外の者にも笑いかけるし、じゃれついたりもする。
そうすると今度は言葉を喋りだす。これは素質に左右されますからその応用力の程は一概には言えませんが、大抵の少女は一通り喋れるようになります。
そもそも「育つ」ことが出来る、という事自体が「喋る素質」と言って良いでしょう。
素質の無い少女はまず「育つ」事自体が不可能ですから。
では育ったのに喋らない、つまり今のルークと同じ状態の少女は何なのかと言いますと、簡単な事です。
少女自身に喋る気が無いんです。
この原因の殆どは主人の方にあります。
ええ、ルークが喋らないのは貴方が原因なんですよ、アッシュ。
コーラル城でも言いましたが、必要性の問題です。
貴方はルークの表情からその意図を読み取ることに長けている。ああ、別に褒めているわけではありませんから勘違いしないでくださいね。
……では、静かになった所で続けます。(爽)
コーラル城での事を思い出して下さい。
そうです、ルークは自らディストを呼びました。声を使う必要があると判断したからです。しかしそれ以上は喋らなかった。ディストも一応プランツの扱いは慣れてますからね。それ以上は喋らなくても問題ないとルークは判断したのでしょう。
ええ、そうです。ルークに「喋ることによるメリット」を教えてやれば良いんです。
そうですね、例えば…



「ルーク」
呼びかけると、今までアッシュの髪を弄って遊んでいたルークはきょんと瞳を大きくしてジェイドを見た。
「アッシュは貴方に喋って欲しいそうですよ」
いつそんな事を言った。そう反論しようとし、しかしルークに袖を引かれてぐっと堪えた。
ルークの碧の瞳がじっと見上げている。
本当に?
そう語る瞳。
ルークが喋れなくとも、アッシュはルークが何を言いたいのか理解できる。
しかし、もし、本当に会話が出来るのなら…。
また、軽やかに名を呼んでもらえるのなら…。
「…あ、ああ…」
するとルークはにっこりと笑って唇を開いた。


「じゃあ、俺、喋る」


…………「俺」?

一同が唖然としてルークを見つめる中、一人ジェイドだけが笑顔を深めていた。
「言い忘れましたが、言葉遣いは身近な者の口調を真似る傾向があります。つまりルークにとってはアッシュですね」
いつも以上ににこやかに語るジェイドをガイがじと目で見る。
「旦那…最初から分かってたんだろ…」
「いいえぇ、こればっかりは実際に喋らせてみない事には」
はっはっは。
がくりと床に這い蹲って項垂れているアッシュと、それをわけわからず覗き込んでいるルーク。
「アッシュ?なあ、どうしたんだ?どっかイテェのか?」
それが逆効果だとも知らず、ルークは頑張ってアッシュに話しかけていた。







外郭大地に戻った頃から、一行のギスギスした雰囲気は多少なりとも緩和していた。
ルークがヴァンの目的について何も知らなかったと判明したからである。
では何故ルークはヴァンを嫌っていたのか。それもルーク自身の口から語られた。
嘘の笑みが怖かったのだと。
顔は笑っているのに、ルークにはどうしてもそれが笑っているように見えなかった。
笑顔の下に冷たく見下ろす何かを感じていた。
それはルークだけではなくアッシュにも向けられていて。
アレは悪い人だ。
ウソツキだ。
自分たちに良くない存在だ。
ルークは本能的にそれを感じていた。
だから嫌っていたし恐れていた。警戒していた。
そしてアクゼリュスで何故ルークが宿を飛び出したかも判明した。
疑うという事を知らないルークの性質を利用してヴァンが誘い出したのだと。
一度はアニスが虚偽ではないかと声を上げたが(勿論アッシュと口論になった)それはジェイドによって否定された。
プランツもプラントも嘘をつくことはできない。
真実を偽らなければならないという考えそのものが彼女たちには理解できないのだ。
例えそれが自分にとって不利な事であっても、彼女たちが偽りで以ってして取り繕うことは有り得ない、と。
そうして彼らの間に流れる刺々しい空気は、多少の緩和を示したのである。


ところで。
お気づきのとおり、ルークは喋るようになった。
しかし、それはアッシュに対してのみだった。
ガイにすら、ルークは以前と同じように視線で語った。
何故アッシュ以外には喋らないのか。
ジェイド曰く、恐らくアッシュ自身がそれを望んでいないからだろう、そしてそれを察したのだろう、と。
図星だったのか、言葉に詰まったアッシュに女性陣から非難の声が上がる。
しかし魔界に落ちた際に頭のネジが一本二本飛んだのか、責められれば開き直ってルークを独占し、女性陣VSアッシュの戦いの火蓋が切って落とされたり落とされなかったりした。










***
ルークはこうして男言葉になりましたの巻。(何)
今更言うのもアレですが、プランツやプラントの設定は捏造満載なのでそこんとこヨロシク。(前にも言った気がする)
後半は蛇足的な感じですみません。蛇足的というか蛇足です。
このタイミングでしかルークがヴァンの事を嫌っている理由とかヴァンの目的を知っているのかどうかとか明かせねえ・・・と気付きまして。無理やりこじつけました。
なので文章がカクカクしてます。(爆)






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