いつわりの花園






厄介な事になりましたね。…ルークの『伴侶』の事ですよ。
ええ、彼です。間違いないでしょう。
…いえ、それ以前の問題なんですよ。
御存知の通り、彼女たちは他人の感情の機微に敏感だ。
相手が自分をどう思っているか彼女たちには手に取るようにわかるんです。
人間や動物の恋愛とは違います。彼女たちは片思いなどという無益な事はしない。
そうです、ルークは相手も自分を求めていると察した。
だから彼女は『大人』になった。
プランツ・ドールが自らを愛してくれる者を主に選ぶように、プラントもまた、自分の半身となる者を『伴侶』とする。
……ルークの身柄はいずれマルクトで保護できればと思っていたが…これは予想外だ。
…いえ、何でもありません。ただ、本当に厄介だ、と言っただけですよ。






アッシュたちはメジオラ高原に来ていた。
崩落の始まったセントビナーに取り残された人々を助けるため、空を飛ぶ音機関、アルビオールを借り受けるためだ。
残念ながら初号機は飛行テスト中にメジオラ突風に巻き込まれて墜落してしまった。
そのアルビオールの操縦士であるギンジという青年と、初号機に取り付けられている浮遊機関を回収することを二号機を貸してもらう条件として彼らは砂の舞うこの高原へと来ていた。
二手に分かれることになり、アッシュ、ガイ、ティア、そしてルークが右手の方へ進むことになり、残りのメンバーは左手の方へ進むことになった。
アルビオールの墜落した崖へ双方が辿り着くのに然程時間は掛からなかった。
お互いに手を大きく振って合図をし、ギンジと浮遊機関の救出を開始した。
救出自体に然程時間は掛からなかった。しかし近くの棚にアルビオールを降ろしたは良いがギンジと浮遊機関、それらをどうやって迎えに行くべきか。一度合流したほうが良いのではないだろうか、しかしそうこうしているうちにギンジが魔物に襲われやしないだろうか。
そんなやり取りが双方であったらしく、簡単な身振り手振りでその意思疎通は適った。
それを岩陰で座ってみていたルークはとてとてと崖っぷちに駆け寄り、止める間も無くまるでちょっとした段差を降りるような気軽さで飛び降りた。
「ルーク!!!」
幾つもの叫び声が重なる。慌てて四つん這いになって下を覗き込むと、ばさり、と大きな羽音と共にルークが浮上してきた。
ぽかんとして見上げているアッシュたちをからかうように青空をくるりくるりと旋回するのは、両の腕を大翼に変化させたルークだった。
マルクト皇帝に貰った白地のロングコートの裾をはためかせ、すいっとルークはギンジの居る岩棚へと向かう。
黒のスカートがばたばたと翻り、アンダーを履かせておいて良かったとアッシュは心底思った。
ギンジはルークが目の前に降り立ち、その翼を畳んでもぽかんとしたままだった。口を阿呆のように開けているのがアッシュたちの所からでも分かる。
ルークが何か話しかけ、それで我に帰ったギンジと言葉を交わす。するとギンジは取り外した浮遊機関を懐に入れ、再び羽ばたいたルークの腰にしがみついた。
ばさり、と一層大きな音がし、ゆっくりではあったがギンジをぶら下げたその身体がアッシュたちの方へと戻ってきた。
ギンジをアッシュたちの前に降ろし、その翼を元のほっそりした腕に戻したルークはにっこりと得意げに笑った。



「ルーク」
シェリダンへ帰還する途中、殿を歩いていたジェイドが呼び止めた。
「?」
アッシュの隣を歩いていたルークは速度を落とし、ジェイドと並ぶ。
なに?と視線で問いかければ、ジェイドが二言、三言何かを呟いた。
それはとても小さく、前を歩いていたアッシュは勿論、普通ならば隣を歩く者にすら聞こえなかっただろう。
しかし彼の傍らを歩いていたのはルークだった。五感の優れたプラントである彼女がそれを聞き取ることは容易い。
ルークは瞳がまん丸に見開いて男を見上げたが、彼の嘆息にしゅんとしてその横顔を見た。
「理解したならそれで良いです」
ルークはこくりと頷き、アッシュの傍らへと戻った。






「その『力』を使うのは止めなさい。…多用すれば暴走して『天使化』しますよ」











***
この辺からどんどん話がすっ飛びます。書くこと無いので。ゲームどおりというか、寧ろ大きなイベントは発生してないことになってます。戦争イベントとか偽りの王女とか。両国は常に一触即発状態で、多分このままいけば結局開戦しません。ナタリア云々のはアブソーブゲート後に発生予定です。
プランツもさり気に終わりが見えてきたのでほっとしてます。まあアブソの後にも一個山場があるのですが…。
次は多分地殻停止云々。一気にシンク戦まで飛ばすかも。

そういえば浮遊機関って実際、どんなくらいの大きさなんでしょうか。ライナーが身につけてたってことは拳大程度でしょうか?うーん。






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