いつわりの花園
ルークがこの屋敷に来て一年。
アッシュはまた年を重ねたし、ルークも一歳を迎えた。 アッシュの後ろを何処までも着いていくルークと、彼女に合わせた歩調でゆったりと歩くアッシュ。 その姿はもう屋敷内では当たり前の光景で。 まるで仲睦まじい兄妹のように彼らは見守られて日々を過ごしていた。 「……」 アッシュの一日の最初の仕事はルークの服を着せることである。 始めこそ上手く着せることが出来なかったややこしいドレスも今では恐らく眼を閉じていても素早く着せることが出来るだろう。 そして今朝もこうして純白をベースに薄紅色のリボンが多量に散ったドレスの袖にルークの腕を通させたのだが。 「……」 思わずふと視線を脇に反らせ、もう一度それを見てみる。先ほどと全く同じ光景。 「……何でだ」 おかしな着せ方でもしてしまったのだろうか?いや、これで合っている。 「…ちょっと待ってろ」 着せ掛けていたドレスを床に落とし、アッシュはクロゼットを開けた。ずらっと並んだ色とりどりのドレスの一着を取り出し、今度はそのドレスをルークに着せてみる。 「……」 やはり先ほどと同じ結果となった。何故だ。原因が思い当たらない。 そうなってしまった原因を求めてこの一年の記憶を反芻してみるがやはり思い当たらない。 当のルークはアッシュの珍しく意味不明な行動にただ小首を傾げている。 「…一先ず、着せるか」 このまま下着姿にしておくわけにもいかないし。 始めに着せようとした、今では床に所在無げにしているドレスをベッドに放り投げ、二着目のドレスを着せにかかった。 そして最後のボタンを填める。いつもより力が居ると感じたのは気のせいではないだろう。ルークも漸く異変に気づいたのか、ただ気持ち悪いだけなのかは分からないが微かに嫌そうに身を揺らしてアッシュを見た。 「キツイだろうが少しの間我慢してくれ」 すぐに仕立て屋を呼んでやるから。 どこか不恰好な姿にアッシュは溜息を付いた。 本当にどうしてこんな。 ルークは、育っていた。 *** ルークが育ってドレスがちんちくりんの巻でした。 今回は短め。いや、もうちと長くなる予定だったのですが何か、区切りよくなってしまったので。(爆) |