10:嘘吐きっ!
(はじめの一歩/木村/アネモネ設定)




男は女が産婦人科へ行くと言えば大概が「妊娠か?」と思うらしい。
身に覚えの有無に関わらず、産婦人科に行くイコール妊娠?というのはハッキリ言ってバカかキサマは、と向う脛を蹴っ飛ばしてやりたくなる。(少なくとも筆者はそうである)
まずよく見ろと言いたい。
「産婦人科」というのは「産科」と「婦人科」の融合した科であり、言うなれば耳鼻科と同じようなものなのだ。
産婦人科イコール妊娠と思うという事は、耳鼻科イコール花粉症と思う事と同じくらい滑稽な事なのだ。
勿論、妊娠に関して通う者も多い。しかし同時に生理不順や様々な婦人病で訪れる者も多いのだ。
そこの所を男性諸君はもう少し理解するべきだ。
しかしながらその産婦人科の待合の椅子で項垂れるこの男、木村達也はそういった理解のある男だった。
産婦人科に入っていったからといって妊娠したわけではないのだ、と。
しかしそれ以前に彼は改めなくてはならない認識があった。
幕之内一歩。
その存在についてである。
木村が一歩と出会ったのはもう二年も前のことである。
鷹村に拾われてきた「彼」を木村はとても好ましく思っていたし、彼なりに可愛がってきた。
そう、「彼」を。
今まで木村は一歩の事を同性だと、男だと、信じて疑わなかった。
確かに男にしては愛らしいベビーフェイスだが、男だという先入観がその可能性を完全に消し去っていた。
まさか女だったなどと、どうして思えるだろうか。
いや、待て、待つんだオレ。
ただの付き添いかもしれないじゃないか。
いやいや待て、看護師は一歩自身を呼んでいた。
一歩は一人っ子だったはずだ。ならば母親の付き添いということもいやいやいやだったらあのスカート姿は何だと思ってるんだ。
産婦人科で検査を受ける際、調べる場所が場所の場合、スカートを推奨されることを不幸な事に木村は過去に付き合った女性(誰だったかまでは覚えていないが)によって聞き及んでいた。
「……マジかよ……」
木村は頭を抱えて項垂れた。
産婦人科の待合の椅子で頭を抱えるその姿は傍から見れば「避妊に失敗しちゃった彼氏」にしか見えず、周りから生暖かい視線を集めていることに木村は(幸いにも)気付かなかった。







***
産婦人科に通っていた時、あらぬ疑いをかけられてブチ切れた事があります。
問答無用で蹴飛ばしました。にこ。
一度触診があるときにうっかりジーパンで行ってしまい、準備するのに時間がかかって大変お待たせしてしまった記憶があります。ごめんなさい。(ここで謝られても)

 

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