15:そう、これはただのエゴさ。
(沢村×一歩/はじめの一歩)




来るな、と千堂さんは言った。
僕の中では強かったままのあの人にしておいてくれ、と。
受話器はこんなに重かっただろうか。
違う、重いのはこの腕だ。
受話器を置き、だらりと腕を垂らす。回線は切れてしまった。
途端に千堂さんと自分の距離が離れた気がする。
どの病院なのか、聞くのを忘れてしまった。
きっと聞いたところで教えてくれなかっただろうけれど。
藤井さんなら知っているだろうか。
藤井さんに電話して、あの人の入院している病院の場所を聞いて、聞いて。
聞いて、どうするの。
面会謝絶だと言っていた。
強いままのあの人を覚えておいてくれ、と。
それはつまり、弱い姿は見ないでくれ、と。
きっと、あの人も僕が駆けつけることを望んじゃいない。

だけど、ずるい。


ずるい、よ。


千堂さんは良くて、僕はだめだなんて。



――俺は、お前と同じ景色が見たい…



「……よしっ」
僕は受話器をとって番号を押す。藤井さんの携帯番号。
覚えてるよ、プロボクサー沢村竜平。その強さ、戦う姿。
ちゃんと、覚えてる。
だから今度は、沢村さん、あなた自身に。
僕は逢いに行きます。

「…あっ、あのっ、藤井さんですか?!」





***
突発。
70巻〜75巻買ってなかったので買いに走りました。で、74巻。悶絶。
なんていうか、ほんと、はじっぽはナチュラルにみんな一歩ラブだよね。スゴイよ。
あーちなみにうちの沢一は既にデキてます。ええ。
千堂を加えた三人でご飯とか食べに行ってればいいよ。

 

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