16:今日から私は貴方の彼女(彼氏)!
(十文字、セナ/アイシールド21)





セナは十文字に対し、少なからず好意を抱いていた。
それがまもりや仲間たちへのそれとは異なるものなのだと気付いたのは、ほんの数日前。
十文字に抱きしめられ、好きだと言われた。
嬉しくて、自分もだと言ってしまった。
キスをされた。
その日は、ぎこちないまま並んで帰った。
セナは恥ずかしさから始終俯いていたので、十文字がどんな顔をしていたか、記憶に無い。
それから数日、どこか余所余所しいまま時間だけが過ぎていく。
セナに話しかけられない十文字。
十文字の顔を見られないセナ。
セナにはどうしても分からないことがあった。
自分たちは今、どういうポジションにいるのだろう。
それは勿論、アメフトの話ではなく。
知り合い、友達、部活仲間…恋人?
好きだと告げられた。好きだと告げた。
抱きしめられて、キスもした。
けれど、それだけだ。
付き合ってくれ、と言われたわけでもない。
そういうのは暗黙の了解なのだろうか。
今、この時点で既に自分たちは恋人同士なのだろうか。
どうしたら、良いのだろう。



部活を終えて、着替えている最中、セナは自分の携帯電話が振動していることに気付いた。
誰からだろう。
!十文字くんだ。
ちらりと十文字を見てみる。
彼はいつものように黒木と戸叶と何やら話しながら着替えていて、セナの視線には気付いていない。
送信時間は、ほんの数分前。着替える前に送ったのだろう。
メールを開いてみる。
『校門で待ってろ』
それだけ。
一緒に帰ろうってことなのだろうか。
嬉しい。
それと同時に湧き上がる、「どうしよう」の気持ち。
聞いたほうが良いのかな。
聞いたほうが良いよね。
うん、そうしよう。


十文字くんは思いのほか早く来た。
黒木くんと戸叶くんを上手く撒いてきたようだった。
「行くぞ」
「う、うん」
歩く、歩く、歩く、沈黙。
どうしよう、いつ聞こう、今聞こうか、もう少し後で…
「セナ」
「はひっ」
思わず上ずった声が上がってしまう。
「お前、何て声出してんだよ」
あ、ちょっと笑った。嬉しい。
「ご、ごめん、えっと、何?」
「その…俺は、お前のことが好きだ」
「う、うん」恥ずかしい。
「お前も、俺のことが好きなんだよな?」
「う、うん」もっと恥ずかしい。
「なら、今、俺らは付き合ってるんだよな?」
「えっと…」
どう答えて良いんだろう、うんって言っちゃっても良いんだろうか。
「何だよ、嫌なのかよ」
むっとした顔。
「ううん、嫌じゃないよ、そうじゃなくて…」
十文字くんは、嫌じゃないのかなって…その…
「ハァ?お前、人の話し聞いてたのか?」
「う、うん…」
「俺はお前が好きなんだよ。嫌なわけねーだろ」
「あ、そっか、そうだよね…」
そう言って俯く。顔が火照っていくのが分かる。
そっか、そうだよね。
十文字くんは、僕のことが好きなんだ。
「セナ?」
きっと耳まで真っ赤。それでも顔を上げて、十文字くんを見た。
「えへへ…」
「な、何だよ…」
「ううん、何でもないよ」
十文字くんも、僕と同じくらい真っ赤だった。










+−+◇+−+
キモイ。
(2004/10/06/高槻桂)

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