17:お前の為だったら何だってしてやるさ。
(ホーク×一歩/はじめの一歩)




部屋に入るなり抱きしめられた。
痛いほどのその抱擁に、一歩はそれに応じるようにきつく抱き返した。
そのまま畳の上に押し倒される。後頭部を軽く打ち、しかし声を上げるより早く唇を塞がれた。
「んっ…」
キスをされるのは初めてではない。
しかし、こんなのは初めてだ。
こんな荒々しく、激しいキスは。

こんな、冷たい唇は。

いつも彼が口付けてくる時、彼は笑っていた。
穏やかに、それとも、からかうように。
そっと触れるだけだった彼の唇は、少しかさついていて、けれど暖かかった。
なのに、今はこんなにも冷たい。
それが彼の不安を、心の動揺を示しているようで、一歩は喰らい付くようなそれをただ受け入れた。
今はまだ昼過ぎで、きっと今頃母と後輩は海の上で客を相手にしているのだろう。
なのに自分たちはこんな、明るい部屋で唇を貪りあって。
でも、もう独りにしないと誓ったんだ。
だから、この冷たい唇を、肉体を、自分が暖めてあげなくては。
この唇を貪りたいのなら貪ればいい。
この身を喰らいたいと言うのなら喰らえばいい。


だって、こんなに冷たいんだ。


首筋を這う唇も、脇腹を這う指先も、縋りつくように腕を回した背中も。
彼がどんな顔をしているかなんて見なくても分かる。

そんな顔をしないで。
そんな風に泣かないで。
この世界はこんなに広くて、沢山のものがあって、それは時に貴方を傷つけようとするだろう。
貴方を貫こうとする弾丸もある。
貴方を切り裂こうとする刃もある。
ボクはそれら全てを防げないかもしれない。
けれど一緒に受けるから。
決して、独りで傷ついて悲鳴をあげさせることはしないから。

だから、泣かないで。







***
あれ?目指していた方向と違う話に…あれ?(爆)

 

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