20:電話してね・・・
(歩夢/はじめの一歩)




意外だ、と女子は笑っていた。
詐欺だ、と男子は嘆いていた。
勝手に人の事を「大人しい女の子」だと思い込んでおいてそれはないだろう、と思う。
別に意外でも詐欺でもなんでもない。
入学して数ヶ月で人格決められてたまるか。
そりゃあ確かに大人しく振舞おうとしていた。それは確かだ。
だって高校よ?
半数は持ち上がりだった中学の時と違って、学年の殆どが見知らぬ男女。
しかも自分の割り当てられたクラスに同じ中学校の子はいなかった。
心細いに決まってるだろ!
緊張するに決まってるだろ!
大人しくしていようって思うだろ!
生憎私は陽気に溶け込めるタイプじゃないのよ!!

「どう思う?!」

電話口で叫べば、電話向こうの相手はからからと笑った。
『あゆは顔はお父ん似やけど中身は実はお母ん似やからなあ』
素の雰囲気もお母ん似やでー緊張するとお父ん似やけどなーと笑う声に、そうじゃない!と返す。
「そういうこと聞いてんじゃないの!人のこと詐欺って何よ詐欺って!いつアンタを騙したっちゅーねん!」
『まあ、そう言やすなや。オドレくらいのモンはそんなモンやて。別にそんで苛められたんとちゃうんやろ』
「…そりゃあ、まあ、女子は取っ付き易いって笑ってたけど…男どもがムカツクねん」
『おう、なんや言うてくるんやったらワイ呼べや。ワイの女に何いちゃもんつけてん言うたら』
「スーパー・フェザー級世界チャンピオンにそんな事頼めるかっての。ていうかアンタに頼むくらいなら自分でボコるわ。寧ろ誰がいつアンタの女になったん、バカやろ」
『関西人にバカはあかんて言うてるやろが!』
「ならアホ!アホアホアホー!カース!!」
『それはそれでムカツクんじゃ!オドレのしたろかい!』
「おーおー偉大なるチャンプ様は女子供に手ぇあげるんですか」
『キサマは別格や!…ちゅーか頼むわあゆ、口の悪いトコまでお父んに似んといてえなぁ』
「父さんは私の口調がアンタに似ていくのがイヤみたいだけどね」
『なんでやねん!関西弁の何があかんねや!』
「知らない。父さんに聞いてみる?代わろうか?あ、父さん!千堂さんがね…」
『ままま待て待て待て!いらん!代わらんでええ!!』
「冗談よ。今日は父さん遅くなるって電話あったもん」
『騙したなー!!』
「ええ、騙したわよ。それが何?」
『こんのこまっしゃくれたチビ助がぁ!』
「残念でしたー、身長は後ろから数えたほうが早いですーぅ」
『あんま可愛げないと嫁にもろたらんで!』
「誰がアンタの嫁になるかっちゅーの!!あ、母さんがご飯だって。切るね。じゃ」
『あ!待ち!幕之内に代わっ』
がちゃんっ。
問答無用で下ろした受話器を見下ろして呟く。
「未練がましいのよ、バーカ」
べっと電話機に向かって舌を出していると、ひょこっと台所から母が顔を覗かせた。
「あゆちゃん?電話終わったんなら滋郎くん呼んできてくれる?」
「おっけー母さん」
そう返してからあれ?と思う。
(…そもそも何で私、千堂さんに電話したんだっけ?)
あれれー?と呟きながら弟の部屋へと向かう。
その足取りが軽くなっていることに、歩夢自身は気付いていなかった。








***
階級の呼称は子供編では新しい方で呼んでます。
関西弁は伝染る。ていうか岐阜弁混じった気がする。(爆)
あと、別に歩夢は千堂とくっつくとかそんなんじゃないです。ただ仲が良いだけで。
・・・くっつけたほうが良いですか?ラブコメる?(誰に聞いてるんだ)
あーあとは歩夢でも一歩でも愛でもいいけどSEIRIネタ書きたいなあー(爆)

 

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