29:よく言うだろ、『恋は盲目』ってさ。
(真紀子、豪、巧/バッテリー)




おかえり、と帰宅した上の息子に声をかけ、真紀子はあら、と小首を傾げた。
「巧」
階段に足をかけた格好で振り返った巧は視線だけで用件を問うてくる。
「そのマフラーと手袋、どうしたの?」
巧の首にはモスグリーンのマフラーが、そしてその両手には黒の手袋が嵌められていた。
息子二人の衣類は全て真紀子が購入している。しかしその二点を購入した記憶は無い。
すると巧は「豪の」とだけ告げて階段を上っていってしまった。
「豪君のって…」
ばたん、と扉の閉まる音と同時に真紀子は呟く。
しかしそこから続く言葉が思い浮かばず、真紀子は自然と溜め息をついた。



「よ、巧」
凍てつく冷気に満ちた早朝の神社には既に豪が待っており、巧に向かって軽く片手を上げた。
「豪、これ、返す」
突き出されたのは件のマフラーと手袋である。
身につけず、手に持って来たのが巧らしいと言うか。
「そんなに急がんでもええのに」
笑って受け取った豪から視線を逸らし、イヤなんだよ、と呟く。
「嫌?」
視線が合う。
「それがあると、お前の事ばっか考えちまって嫌なんだよ。落ち着かない」
大真面目に言ってのける巧に、豪は寒さからではなく頬を赤くする。
「え、あ、そ、そうか…」
「じゃあキャッチやろうぜ」
もごもごしている豪を無視して巧はさっさと距離をとるために歩き出してしまう。
「た、巧!」
呼びかけるとその背中はあっさりと立ち止まり、振り返った。
「なに」
「その、例えば、どんなこと、考えたんじゃ?」
巧の切れ長の瞳が僅かに丸くなったかと思った次の瞬間には再び鋭さを取り戻して豪に背を向けた。
「…忘れた」
「巧」
食い下がるようにその背中を追うと、足音で気付いた巧がその速度を僅かに上げる。
「何で来るんだよっ」
「聞きたいからじゃ」
「キャッチやるんじゃねーのかよっ」
「聞いてからでも十分出来るじゃろ」
ぴたり、と巧の足が止まる。と同時に豪の追跡も止まる。
巧は振り返り、
「忘れたって言ってるだろ!」
怒鳴って再び歩き出した。今度は豪は追わなかった。
「ほぉか」
巧の背中に向けて笑いかける。巧が立ち止まり、くるりとこちらを向いた。
「忘れてもうたか」
巧の頬も、ほんのりと紅く染まっていた。







+−+◇+−+
初ばてりSSS。わけわかんね。まあ三ヶ月くらい何も書かなかったしこんなもんか。いや明らかに駄(以下略)
えーと、学校帰りに巧が何気なく「寒っ」と呟いたら豪が過保護に己のマフラーと手袋をつけさせたのです。無理やり。
あとは実はカイロも持たせてた。ウチの豪は巧バカというかアホなくらいが丁度良いです。シリアスは読み専で。
そして巧は沢口と百合ってると良いと思います。それを見た豪と東谷があわあわしてるが良いと思います。
吉様はさりげなく豪と巧の間を邪魔してると良いと思います。あわよくばおミズや門脇も。ていうか展西を。(またか)
戸村と青波が無駄に仲良いのが良いと思います。吉様の前では思わず関西弁が出てしまう巧が良いと思います。
限がないです。ハイ。岡山弁が分かりません。
(2005/01/16/高槻桂)

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