36:大好きだよ、バカ!
(宮田×一歩/はじめの一歩)




コイツと連れ立って何処かへ行くことは滅多に無い。
だから気付かなかったし、知らなかった。

「あら、一歩くん。今日はお出かけなの?」

コイツが女(主に水商売系の)受けがいいことに。

「あ!一歩くんだぁ!奇遇ね!」

恐らく鷹村さんたちが連れて回ってるせいもあるだろうけど。

「幕之内君、またみんなでお店に来てネ!」

さっきからちょっと歩いては呼び止められ、

「きゃ!一歩君!ヤダ!アタシこんなフツーのカッコなのにぃ」

その度にぺこぺこ頭を下げるバカ。

「一歩くーん、試合決まったら教えてねー!」


この、バカ、がっ!!


「幕之内!!」
「はひぃ!」
また引き止められた女に頭を下げ、あのバカが慌てて駆けて来る。
「ごごごごめん宮田くん!この辺、鷹村さんたちがよく…」
「知・っ・て・る」
「えと、あの…その…」
「何だよ」
「ごっごめんなさいっ!」
「何が」
「へぇっ?」
「何が、何に対して、何で」
制限時間十秒。ハイ10、9、8、7…
「わわわっ!みっ宮田くんを待たせたから?!」
「十点。帰る」
「ままま待って!えと、あのっ、違ったらごめんなさい!」
男のクセにもじもじ人差し指をあわせてんじゃねえ。
「…ボクが、女の人と話してた、から…?」
「…三十点。じゃあな」
「あのっ」
「何だよ」

「宮田くんと、一緒なのに、他の人を見て、ごめんなさい」

「……」
ちくしょうムカツクぜ。何なんだコイツは。
もじもじすんな。ちらちら見てくんな。所在無げに肩を下げるな。
ああもうちくしょうちくしょうちくしょう!
なんでそれが可愛く見えちまうんだオレは!!
ああそうさ認めてやるさ!
「……さっさと行くぞ」
「えっ…う、うん!!」

大好きだよ、バカ!!






***
381…のハズなんですが…誰だお前ら。

 

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