44:どうしたら信じてくれる?
(リキッド→シンタロー/PAPUWA)




ある昼下がり。
洗い物をしている俺たちをさっさと置いてちみっこどもが出かけてしまい、俺とシンタローさんは結果的に二人きりになった。
この家で二人きりになれるということは殆どない。
不覚にもそわそわと落ち着きを無くしていく俺に、シンタローさんが無言で左手を上げたので慌ててその名を呼んだ。
「シ、シンタローさん!!」
「チッ…あんだよ」
チッって言った!今絶対舌打ちした!
そわそわしただけで眼魔砲撃たれてたまるか!
いや、っていうか寧ろ!

「シンタローさんが好きです!」

言っちゃった俺!
今度こそ眼魔砲来るかもしれない!いや来る!
…しかし現実はもっと世知辛い。
シンタローさんは突然やってきた訪問販売員を見るような目で俺を見て一言。
「芸がない」
えええええー?!
「告白に芸って必要なんスかー?!」
「その手の言葉は聞き飽きた」
え?アレ?これってさりげなく自分がモテるって自慢してる?
いえいえいえスミマセン、本気で嫌なんスね、ハイだから無言で片手を構えるのやめてください。
確かにシンタローさんは毎日あのナマモノどもから告白ならぬ襲撃を受けてるし、ストーカーはいるし寧ろ前総帥がアレだしでそういうのには慣れているというより聞き飽きているのかもしれない。
だけど俺の告白までそこに分類して欲しくない。
「ホントに好きなんス!」
「じゃあ三分以内にクボタくんの卵をとって来い」
ワオ無理難題。
はなっから信用する気ナッシング!
いや待てリキッド。
そう、俺は元特選部隊のリキッドだ。
あの拷問に耐えたんだ、これくらいやってのけなくて何が愛だ告白だ!
あ、ちょっと涙出てきた。
「せ、せめて一時間…」
「仕方ねえなあ。十分」
どうしても可能時間内に変更する気は無いんですネ。
「…わかりました!男リキッド、行ってまいります!!だから信じてくださいね!!」
涙を振り切ってパプワハウスを飛び出していく。
だから俺は知らなかった。
俺が走り去った後、シンタローさんが顔を赤くしてしゃがみこんでいたことに。





***
シンタローは青の一族関連に好き好きコールされても無視しますが(サービスとコタロー除く)島の住民に好かれるのは弱いです。で、シンタロー自身もリキッドをそっち側に分類していることに言われて初めて気付いたというか。上から好きだといわれることに離れていても下から好きだといわれることに慣れてなさそう。

 

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