8:浮気したら只じゃ済まないからね。
(阿含、雲水/アイシールド21)





夕食後、雲水は監督に呼ばれているからと職員室へ行ってしまい、阿含は一人で部屋へと戻った。
そして当然のように雲水のベッドに寝転んで己の携帯電話を取り出す。
特にやりたい事があるわけではなかったので、とりあえず無駄にメールボックスを占領している女たちからのメールを削除していく。
阿含は基本的に女の番号をメモリーに登録したりはしない。どれも番号のままでメールボックスを占領している。
番号の羅列の中に時折混じる「雲水」の文字。
唯一この携帯電話が記憶している番号。
自宅の電話番号すら記憶させていない。まず掛けた事など無かったし、一応覚えてはいる。
いざと言う時は雲水に聞けばいいのだ。
とにかく番号だけのメールを削除し、メールボックスの中には「雲水」が並んだ。なんとなく満足。
すると軽やかな音楽が流れてきて阿含は身を起こした。
聞き覚えのある、確かクラシックのアレンジ曲だ。
しかしそれを着信音にしているのは自分の携帯電話ではない。
枕元でその存在をアピールするメタリックシルバーのボディ。
雲水の携帯電話だ。
未だ携帯電話を携帯するという習慣が身につかないらしく、雲水がよく部屋に置きっぱなしにしていることは知っていたが。
知っていたが、彼の携帯電話に自分以外の者が掛けてくるなど思いの他だった。
「……」
阿含はその携帯電話を手にとり、ディスプレイを見る。
そこにはメールの着信を知らせる画像が点滅していた。
送信者は、「小早川瀬那」…聞いたことも無い名前だ。
しかもこの名前では男なのか女なのかも判断できない。
阿含は迷わずメールを開いた。


送信者:小早川瀬那
件名:こんばんは、セナです。
本文:この前話してたお店に行ってみました。
ウチの近くのお店よりずっと品揃えが良くてビックリしました!
本当にありがとうございました!
セナ



「あ゛ー?」
何だよコレ。
続けて受信ボックスを開けてみる。
ずらーっと並ぶ「小早川瀬那」の文字。
時折「石丸哲生」の名前があるのはまあ見逃そう。一応知ってるヤツだし。
適当な所で開いてみる。


送信者:小早川瀬那
件名:セナです。
本文:明日の水族館、楽しみにしてます!
横浜に行くのは久しぶりなので駅で迷いそう;;
明日電車に乗ったらまたメールしますね。
おやすみなさい。
セナ


送信者:小早川瀬那
件名:こんにちは、セナです。
本文:今、昼休みです。まもり姉ちゃんのお弁当はいつも美味しくて、凄いなあって思います。
雲水さんはお弁当ですか?神龍寺って食堂とかありそうなイメージがあります。
今夜、もしよければ電話させてください。
セナ


「……」
何だコレ、何だコレ、何だっつーの!
つーか男か女か、女か、オンナなのか?!
携帯電話を壊しそうな勢いで今度は送信ボックスを開いてみる。
これまたずらりと並ぶ「小早川瀬那」の文字。


送信先:小早川瀬那
件名:Re:
本文:そうだな。今度やってみる。


送信先:小早川瀬那
件名:(無題)
本文:まあ、全く思わないでもないが、あれでも良い所もあるからな。


送信先:小早川瀬那
件名:(無題)
本文:場所はこの前と同じで良いか?



「短すぎてわけわかんねー…」
雲水らしいと言えばらしいのだが。
こうなったら全部のメールを読むべきか。
そう思うと同時にドアが開いた。
「…阿含、人のケータイを勝手に見るな」
職員室から戻ってきた雲水は、自分のベッドで勝手に自分の携帯電話を弄っている阿含の姿に溜め息を吐いた。
施錠し、手にしていたファイルを自分の机の上に置くと阿含の傍らに腰掛けて携帯電話を取り戻すべく手を伸ばす。
「こら、阿含」
ひょいとその手から携帯電話を遠ざける阿含を軽く睨むと反対に阿含の腕が伸びてきて雲水を引き寄せた。
「小早川瀬那って誰だよ。オンナ?」
「バカか。セナは男だ」
「男と水族館行くのかよ」
「何か問題があるのか?それにセナの他にもセナの幼馴染みと石丸もいた」
「はぁ?何でそこで石丸の名前が出るんだよ」
「セナは泥門のアメフト部の主務だし、そもそもセナと知り合ったのは石丸を解してだ」
「それで何でこんな頻繁にメールが入ってんだよ」
阿含の言葉に、一瞬雲水はきょとんとする。何でと言われても。
県を隔てている友人と話すのにメールの何がいけないのだろう。
「……ああ」
そういうことか。雲水は途端に可笑しくなって笑い出した。
「何笑ってんだよっ」
「お前、嫉妬しているのか」
阿含の口が「バ」の形で固まる。
「…ッカじゃねーの?!んなダセェ事するかよ!」
「そうか、違うのか。なら俺がセナとメールすることに何の問題があるのか言ってみろ。ん?」
「そんなモン、お前は俺だけ見てりゃ良いんだよ!」
阿含の言葉に雲水の笑みが一層深くなる。
「ああ、嫉妬じゃなくて独占欲か」
雲水は笑いながら阿含の首筋に擦り寄るように顔を寄せる。兄のその珍しい行動に阿含は出掛かっていた反論を飲み込み、圧し掛かっているその身体を抱きしめた。
「…お前は俺のモンなんだよ。わかってんのか?」
悔し紛れにしか聞こえないそれに、雲水はくつくつと可笑しそうに喉を鳴らした。










+−+◇+−+
アッレー、何かエセラブい。(何それ)
ウチの雲水は石丸とオトモダチです。そしてその石丸を解してセナともお友達です。
ちなみにここのセナは進セナなセナです。ラバとも仲良しでラバは高見とラブでホモカポーだらけです。
ヒル魔はセナにちょっかいかけるわりに実はムサヒル、ルイヒルの方向で。
雲水って一言メールが多そう。「わかった。」とか「そうだな。」とかそれだけ。下手すると「。」すらついてない。
セナはどうも原作を見てる限りそれ程顔文字とか使わなさそうなので使いませんでした。ていうか私自身が使わないのでもしセナが顔文字使いまくる子だったら顔文字のサイトをめぐる羽目になってました。(爆)
元々、阿雲にハマる前はセナ総受けのみだったので、進セナと同時に雲セナが好きでした。マイナー魂健在。しかしまあ気付いたら阿雲にすっとーんとハマったので忘れてましたが…雲セナ…ウフフ…。
(2004/09/21/高槻桂)

戻る