ありがとう
朝は曇っていたというのにそれを微塵にも感じさせないよく晴れた午後。
「う〜ん、これも上手く焼けてる!」
テラスではぽかぽかと暖かい日差しを浴びながらティータイムを楽しむ少年の姿があった。この城のリーダーであるカッツェは小さ目のサイズをしたレモンパイをぱくつきながら満面の笑みで目の前に座る男を見る。
「ゲオルグさん、美味しい?」
問いかけに何度も頷きながらチーズケーキを頬張る男は元赤月帝国六将軍の一人であるゲオルグ・プライムだった。
「よかった」
ゲオルグの返答に零れんばかりの笑顔で喜ぶカッツェ。そう、彼らのテーブル上に並ぶ色取り取りのケーキは全てカッツェが作った物だった。チーズケーキは勿論、レモンパイにラズベリーパイ、チョコレートケーキにレアチーズケーキ。全て直径十センチほどのもので、カッツェがゲオルグに色々な種類のケーキを食べてもらいたくて作った物なのだ。
「僕、普通の料理よりお菓子の方が多少自信あるからゲオルグさんが甘い物好きでよかった」
レモンパイを食べ終わり、次は何にしようかとテーブルの上のケーキ達を見回す。
「う〜ん…じゃあ。コレ!」
カッツェはチョコレートケーキを取ると一口食べて
「よし、これも上手く焼けてる!」
と嬉しそうにガッツポーズを取った。
「あ」
ふとカッツェはゲオルグが次に食べ始めたラズベリーパイに目をやる。
「そのラズベリー、ちょっとすっぱ目の早摘みしかなかったんだけど…大丈夫?」
不安そうなカッツェにゲオルグは笑いかけると「大丈夫だ」と安心させてやる。
「ちょうどいい甘酸っぱさだ」
「ふ〜〜ん」
カッツェはまだ不安そうに言うとカタリと席を立つ。どうするのかと見ていると、カッツェはゲオルグの隣に立ち、ちゅ、とその男の唇に口付けた。
口内に入ってきたカッツェの小さな舌をこちらから絡めてやると、カッツェは少し驚いた様にびくりと反応したがすぐに答えてくる。カッツェの舌はチョコレートの味がしていつも以上に甘かった。
「…ん…ふぁ……」
カッツェがそろりと唇を放す。暫し余韻に浸っていたがすぐにその唇をにこっと吊り上げると
「ホントだ、甘酸っぱい」
と笑った。
「お前のは甘かった」
カッツェは仄かに赤くなると「へへへ」と照れ臭そうにゲオルグに抱き着く。ゲオルグも左手でその腰を引き寄せながら右手ではしっかりとフォークを持ち、再びラズベリーパイを食べ始めていた。
カッツェはにこにこと微笑みながらその首筋に顔を埋める。
(あなたは、僕に力を貸してくれた。この戦いを諦めないという大きな「力」を)
だから僕はあなたのためにケーキを焼き
あなたのためにお茶をいれ
あなたのために笑うこと
それが大好きなあなたへ、せめてもの
ありがとう
(END)
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あ〜あ、やっちゃった。ゲオルグ×主人公、ひたすら甘々SS。いや、これ実は幻水のSSページ作る時、真っ先に浮かんだネタです。
…え?「恋歌V」はどうしたって?全く書いてませ〜ん!!いや、話は出来てるんだけど時間が無いのよ。一日二、三時間ぐらいしかパソやる時間なくって…しかもその内の一時間は完璧ネットサーフィン(又はチャット)やってる。
本当にごめんなさい!!…ま、続き待ってるヤツなんてそう居ないだろうがさ…
(2000/05/15/高槻桂)