毘●星伝ネタ(才蔵×景虎)


御館の乱にて鮫ヶ尾城が陥落し、海津城に逃れた景虎は真田昌幸に匿われながらもいつか来るべき日の為に鍛練の日々を送っていた。
しかし景虎の耳の奥では先日の東条父子を誅した帰り、己が間近に落ちた雷の怒りにも似た轟音が今も響いていた。
(お屋形様…)
謙信には申し訳なく思う。しかし今の景虎にはこうするよりどうしようも無かった。
どれほど景勝を討ち、実城を取り戻したくとも今自分の下知に応じてくれる者は最早ただ一人、神田右衞門のみだ。
兵部も遠山も柿崎も、みな景虎の為に戦い、散ってしまった。
実家である北条もあの戦で景虎を見捨てたし、当然真田にとてこれ以上を頼めるはずもなかった。
(それに今のわしは武士ですらない…)
景虎のしなやかな四肢には鑓や刀を降るう武士とも畑を耕す農民とも違った筋肉がついていた。
(わしは今、闇夜に紛れ樹々の間を行く忍び…いや、まだまだ足下にも及ばぬな…ならばわしは何なのであろうか…)
真田の好意により霧隠才蔵他真田十人衆にその技を学んではいるものの、しかし忍びになるつもりはない。
このまま真田の庇護の元、ただ生きるのか。
巡り来るとは限らぬその日の為に。
来るのか?本当に今この日々は報われる日がくるのだろうか。
景虎の思考はあの雷鳴以来落ち込んで行く一方だった。
それまで己を鼓舞しながら耐えて来た何かが雷によって打ち崩されて行くようでもあり、耳の奥で未だに鳴り響くそれが崩壊を告げる鐘の音のようであった。



ある朝、景虎はどこか息苦しさを感じて目を覚ました。
差し込む光はいつもより柔らかみを帯びており、彼にしては珍しく遅めの起床であった。
そしてこれまた寝起きの良い景虎にしては珍しく、ぼんやりとした頭で上身を起こした。
やはり微かな息苦しさが纏わりつく。
「………ん?」
息苦しさを紛らわすべく白綸子の合わせを開き…景虎はしばし己の胸元を見下ろした。
「…………」
昨夜はさほど酒も飲まず横になったはずだが…まだ酒が残っているようだ。
景虎は何事も無かったように顔を上げ、ぐるりと室内を見回すと再び己の胸元を見下ろした。
…先程と変わらない。
「!?」
それに手を当て、やはりそこに存在することを確かめてしまった景虎は思わずびくりと肩を揺らしてしまった。自身の手だというのに。
これは如何なる事かと思案巡らせるがしかし解答となる考えが全く浮かばない。
たとえ病だとしてもそう詳しくはない。
「そうじゃ!」
景虎は乱した胸元を合わせると勢いよく立ち上がった。
「誰かおらぬか!」
すると静かに襖が開き、神田右衞門が現われた。
「これに」
「右衞門、才蔵殿はおられるか」
「霧隠殿にございますか?先程は猿飛殿と共に幸村様の元におられましたが…」
「ならば景虎が話があると伝えてくれまいか」
「畏まりまして」

「その必要はないぞ」

下がろうとした右衞門の言葉尻に被さるように放たれた声に二人が顔を向けると、右衞門の背後に霧隠才蔵がいつもの派手な装いで立っていた。
「俺になんぞ用ですか、景虎様?」
少なからず忍びとしての鍛練を積んだ二人ではあるが、やはり本職の彼らにはいつも驚かされる。
「右衞門、すまぬがしばし席を外して貰えぬか」
「は」
今度こそ右衞門が出て行くと、景虎は才蔵に座るよう促した。
「このような夜着姿ですまぬな」
海津城に逃れてから月代を剃る事をやめた景虎は、苦笑しながらも僅かに寝乱れた長い髪を手櫛で右前に流して才蔵の前に腰を下ろした。
「構いませぬ。して、如何いたした」
「それが、だな…」
何事もはっきりと物申す景虎にしては珍しく、視線を泳がせながら言い淀んでいる。
「景虎様?」
「うむ…その、妙な事を聞くが……胸が膨らむ病など、ござらんか?」
確かに妙だ。
「はあ、男とて太れば…」
「いや、そういうのではなくてだな…その、おなごのように乳房ができる、という事は有り得るのだろうか…」
やはり妙だ。
しかし景虎は恥じながらも才蔵の応えを待っている。
(…うん?)
そこに至って才蔵は景虎の胸元に目が行った。
先程景虎を目にしてから感じていた違和感。
通常なら気付かぬ程度の些細なものだが、忍びとしての観察眼は違和感を訴えていた。
そして、才蔵は景虎の質問の裏側にあるそれに気付いてしまった。
「…景虎様、ひとつお伺いしても宜しいか」
「うむ、言うてみよ」
「まさかとは思うのだが、御自身の事でござるか」
「っ」
否定か肯定か、景虎の薄い唇が開かれたがしかし言葉を発する事なくその手が不安を押し込めるように己の胸元を掴む。
「なんと…」
景虎にとっては己を落ち着かせる為にそうしたのであろうが、姿勢の良い景虎がそのような事をすればどうなるか。
才蔵は絶句した。
確かに景虎は三国一と謳われし美丈夫ではあるが間違っても美女と形容されたことはない。
実際、才蔵は修行中にその眼で何度も景虎の肌蹴た胸元を見ている。その胸は胸板と呼ばれるものであり間違っても乳房ではない。
が。
「…景虎様、無礼を承知でお願いしたいのだが…見せてはいただけぬか」


そろそろアレな展開になってきたので終っときます(笑)
女体化万歳ww




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