部活で10のお題
06.合宿
(浅瀬〜番外編/テニスの王子様)
関東大会が終わり、青学メンバーは六角中との合同合宿を行っていた。 今日は初日ということもあり、練習は午前中だけで午後は全員で海に出ることになった。 「あれ?乾、脱がないの?」 菊丸の問いかけに乾は合間に笑って誤魔化す。 乾は確かに皆と同じ学校指定の水着を穿いていたが、上は白いシャツを着たままだった。 「…怪しい」 いつからそこにいたのか、乾の背後でぼそりと不二が呟いて菊丸に目配せした。 「!」 ぴんと来た菊丸がにやりと笑って素早く乾の背後に回り込み、乾を羽交い絞めにする。 「ちょ、菊丸、」 「観念しろいにゅい〜!」 「残念無念また来週〜ってね」 不二が菊丸の口調を真似して乾のシャツを思い切り捲り上げ、乾の白い肌を日の元に曝した。 「…わあ、これはまたご大層なことで」 「え、なになにー?!」 乾を抑えながら菊丸が跳ねるが、不二はあっさりと乾のシャツを下ろした。 「エージ、もういいよ。何でもなかったから」 「えー!だってさっき不二、」 乾を開放してぴょこぴょこ跳ねる菊丸に不二はもう一度繰り返した。 「何にもなかったの。エージ」 むすっとして言う不二の機嫌の悪さを察したのか、菊丸はつまんない、と言いながらもそれ以上は追求してこなかった。 「もう!俺桃たちと遊んでくるからねー!」 海に向かって駆けていく菊丸を見送り、不二はその場に座り込んだ。 「今日は手塚にチクらないんだ?」 乾の苦笑交じりの問いかけに、不二は顎を膝の上に置いて唇を尖らせた。 「だって、冗談じゃ済まないぢゃない」 日の元に曝された乾の白い肌には無数の鬱血痕が散っていた。 それが何を意味するのかなんて、わからないはずもない。 「相手は誰さ」 応えは期待してなかった。 しかし予想に反して乾はあっさりと「真田」と答えた。 「…真田にまで手を出したんだ。よく落ちたね、あの堅物」 「堅物だからこそ、簡単に落ちたよ」 口元に手を当ててくすりと笑う仕草に不二は苛立ちを覚える。 どうして彼はこうなのだろう。 どうして、こんな方法でしか寂しさを埋められないのだろう。 巣にかかった蝶を片っ端から食い荒らすような方法でしか自分を表現できない。 「ねえ、今は誰とどうしてようと止めないけど、」 「手塚が帰ってきても真田と別れるつもりはないよ」 「……」 まあ、向こうが別れたいって言ってこれば話は別だけど、と彼は続ける。 「…手塚、悲しむよ」 「そうだね。でも、不二は止めないだろ?」 「何でそう思うのさ」 見上げると、彼は相変わらずの不透過眼鏡で不二を見下ろし、笑った。 「だって不二、俺のこと好きデショ」 手塚と同じくらい、と自信有り気に言うこの男がムカつく。 不二はぷいっと顔を背けると吐き捨てるように呟いた。 「だから乾って嫌いなんだ」 ***** 浅瀬シリーズ番外編。 前日乾さんはお盛んだったようです。(爆) |
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