「バカかてめえ!!」
つい本音を洩らしてしまい、カーシュははっと口を噤みます。が、時既に遅し。
「へーーーえ?バカ。あたい、バカなんだー?」
人にいちゃもんつけるのは好きでもつけられるのは大嫌いという我侭っ子なツクヨミ。最早挽回不可能と見た。
「あ、いや、だからだな、なんで俺がヤマネコの・・・」
「えーい★」
問答無用で月壊を発動するツクヨミ。
「どわぁ!!」
慌てて避けたものの多少食らってしまったカーシュを見てツクヨミは多少機嫌を直したようでした。
「ふーんだ、カーシュのバーカ」
ツクヨミはべーっと舌を出すとくるんと一回転して消えてしまいました。
「あんにゃろ〜・・・・・・」
乱れた髪を軽く手で梳きながらカーシュはツクヨミの消えた辺りを睨みます。
「おや?」
「あ?」
不意に近くから上がった声にカーシュが振り向くと、そこには何故かドクが居ました。
「何でてめえがここに居るんだ?ガルドーブじゃなかったのか?」
今日は意外なヤツにばかり会うなと思いつつカーシュが問い掛けると、ドクはにこやかに笑いました。
「いや、この森にしかない薬草があるんでね。それを採りに来たんだよ」
「ふーん?」
「それより、さっきの爆音は何なんだい?」
月壊の事を言っているんでしょう。カーシュは「ああ」と舌打ちをし、事情を説明しました。
「そうか・・・ああ、二の腕を少し切っているね」
言われて初めて自分の腕に傷ができていると気付いたカーシュ。脳と同じで感覚まで鈍いらしいですね。
「今摘んで来た薬草がある。これを揉んで当てておくと良い」
濃い緑の葉を受け取り、言われた通り揉んでいるとドクが傷周りの砂を払ってくれました。
「あ、さんきゅ」
葉を当て、ドクはガーゼを取り出し傷口に固定させました。
「借りができたな」
苦笑してカーシュが言うと、そうかい?とドクはカーシュの頬に軽く口付けました。
「??!!?!」
突然の事にカーシュが目を白黒させているとドクはにっこり笑って言い退けました。
「これで借りは返してもらったよ」
人間、腹黒いほど爽やかな笑みを見せるものなのだと思い知った瞬間でした。
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