「ま、ここまで来れば大丈夫だろ」
何が大丈夫なんでしょう。とにかくカーシュが引っ張ってきたのは海岸でした。
別に海水浴にはまだ早いこの時期に泳ごうというわけではありません。ただ単に人気の少ない所へ行こうと考えた結果、海岸になってしまったというだけのようです。
「ん?何拗ねてんだよ」
「拗ねているのではない!怒っているのだ!」
腕を振り払われ、むすっとしているフェイトに顔を寄せると唇を重ねます。
「んっ?!」
やめんかこのバカと言わん限りに腕を突っぱねますが力でカーシュに勝てるわけがありません。
「んっ・・・・・・・・・はぁ・・・クソバカーシュ」
「んだと!?」
しっかり舌まで入れられ、フェイトは紅くなりながら口元を手の甲で拭います。
「俺には拗ねてるようにしか見えなかったぜ?」
「・・・それはお前の目がオカシイだけだ」
そっぽむくフェイトの顔をカーシュは自分の方へ向かせ、視線を合わせました。
「な、何だ・・・」
フェイトは逸らしたい衝動を抑えながらカーシュの紅い眼を見つめ返します。
「・・・さっきの、取り消し」
「はあ?」
さっきとはいつの事なんでしょう。フェイトは訳が分からないといった目でカーシュを見ます。
「可愛くねえっつったの、取り消し。やっぱ可愛いぜ、お前」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なっ!?」
暫しパワーダウンしてしまったフェイトのマザーブレイン・・・じゃなくて思考が復活し、言われた言葉を漸く理解します。
「か・・・可愛くなど無いと言っているだろう!お前の目は・・・!」
「はいはい、俺の目がおかしいだけですよーだ」
揚げ足を取られフェイトは更にむくれます。その頬にカーシュは軽く口付けるとにやりと笑いました。
どうやらカーシュの勝ちのようです。
全く猪突猛進型天上天下唯我独尊敵バカには叶いません。
無知より厄介だという事をフェイトは身を持って知る事となりました。






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