屋上にある、フィオが眠っていた噴水の前まで来ると二人は腰を下ろしました。
「なあ、お前なんで皿洗いなんてしてんだ」
唐突にカーシュはそう切り出しました。これはどちらかと言うと作者の疑・・・げっほげっほ・・・いえ、何でも無いですよ。ええ全く。
とにかくそう聞かれたイシトは帽子を外し、髪を整えながら苦笑しました。
さり気にきっちりと7:3分けにしている所がさすが「黒き風」隊長です。
「最初は兵士として潜入するつもりだったんだが無理だと分かって仕方なく、と言った所か」
「兵士に?あ〜そりゃ確かに無理だな」
何で無理なんでしょうね?そこんとこ教えて頂けます?
「ウチの奴等は殆ど友達感覚だからな。大概の顔は覚えてるんだから見慣れない顔が居ようモンなら半日もしねえ内に噂でもちきりになるぜ」
ああ、そういう事ですか。なんだか呑気な騎士団ですね。まあ仕事はちゃんとやってるようですから構いませんが。
「そう。だからテルミナに貼ってあった皿洗いのバイト募集に・・・って何笑ってるんだ」
おや、気付けはカーシュが顔を背けて震えているじゃありませんか。
「い、いや、だってよ、特殊部隊の隊長が皿洗い・・・〜〜〜!!」
冷静に考えれば何が面白いんでしょうね。まあカーシュなら年がら年中箸が転がっても笑えるんでしょう。
「・・・・・・」
笑い続けるカーシュに、イシトは無言で銃を取り出すとぢゃきりと弾を装填します。
「ぅわっ、悪い、悪かった!」
まだ微かに笑いながらも謝るカーシュに、一つ溜息を吐きながらイシトは銃をしまいました。
「全く・・・これでもいいことだってあるんだからな」
「良い事?」
カーシュが鸚鵡返しに聞くと、イシトははっとしたように口を噤んでしまいました。
「コラ、言えっつーの」
しかし好奇心旺盛なカーシュが聞き逃す筈がありません。ここぞとばかりにしつこく聞いてきます。
「だから・・・・・」
「あ?」
イシトは暫く言いよどんでいましたが、一つ盛大な溜息をつくとカーシュの無駄に長い髪の毛を引っ張りました。
「いっ・・・?!」
引かれるままに従ったカーシュの唇に、イシトの唇が当たります。カーシュは目を見開いてイシトを凝視すると、彼は「全く・・・!」とか何とかぶつ突きながら帽子を被り直します。
顔紅くしてぶつつかれても何の効果もありません。
「イ、イシト・・・」
それどころかカーシュは唇を片手で押さえ、イシトと同じく顔紅くして彼を見ています。
いやあ、青春って奴ですか?ちょうど噴水の前ですしね。
「・・・わ、私は仕事に戻る・・・!」
イシトは慌てて立ち上るとさっさと下りていってしまいました。良かったですね、ここが代々○公○でなくて。そうだったら今頃草むらの影に引きずり込まれ・・・って関係ないですね、ハイ。
まあ、とにかく二人とも遅い春というか青春というか。
味わってたり。
おバカですねぇ。