ラズリーが食べないと分かるや否やさっさと残りの一匹をがつがつと食い始めました。が、すぐ隣でじーっと見ていられると何となく気になるので視線を泳がせながら食べています。視線を気にするなんて柄でも無しに・・・。おっと失礼。何でもないです。ええ。
「あ、ゴメン、気になるンだヨネ」
無駄に泳ぐ視線に気付いたラズリーがふわりと少しだけ高く浮き上がります。
「いや、別に良いけどよ」
「ウウン、ボクも別に通りがかっただけダモン。ゆっくり食べてヨ」
ラズリーはにこっと笑うとそのまま森の奥へとふよふよ飛んで行ってしまいました。
カーシュは何だったんだと思いつつもデザートの木の実を齧ります。
「ん。まあこれくらいか」
どうやら漸く腹八分目まで達したようです。カーシュは焚き火に水をかけ、始末すると立ち上って大きく伸びをしました。
「ん〜〜・・・・・・ん?」
どこかから獣の鳴き声が聞え、カーシュは辺りを見回します。
「・・・・・・あっちか」
アクスを担ぎ、声のした方へ向かうと開けた場所に出ました。そしてそこには大きな熊が相手を威嚇しています。
「お?オルハじゃねえか」
熊と退治していたのはなんと妹尋ねて三千里のムチムチぷりんことオルハでした。
「でぇえいっ!!!」
オルハは気合一声と共に熊を見事一本背負いし投げ飛ばしました。これにはさすがのカーシュさんもビックリです。
「うわ・・・」
女が熊を投げ飛ばす光景を見る事になるとは思っても見なかったカーシュは顔を引き攣らせてその場に立ち尽くします。
「ふう・・・・・・あら?カーシュじゃない」
「・・・・よお」
額にきらりと光る汗を拭いつつオルハはにこりと笑います。カーシュもそれに答えようと笑いますがどうやら引き攣った笑いになってしまったようです。
「ねえ、あなた、今暇?」
「あ、ああ」
コクコクと無駄に何度も頷くとオルハはちょうど良かったと言いました。
「じゃあ私と手合わせしてくれないかしら」
「あ?いいけどよ・・・あ、素手の方が良いか?」
ちょうど食後の運動をしたかったカーシュにとってもちょうど良い申し出でしたがさすがに拳相手にアクスはどうかと無い知恵絞って考えたらしいです。
「武器があっても良いわよ。だって敵は私のスタイルに合わせてはくれないでしょう?」
もっともな意見にカーシュはそうかそうかと頷きます。
「それに、動物相手だと物足りないのよ。相手は本能だけだから先読みとかしてくれないし・・・何より可哀相で気が引けるのよね。でもみんな忙しそうだったし・・・」
カーシュも先程の熊とおつむの出来はそう変わり無いような気もしますが人間だと言うだけマシと言う事でしょう。
「ふぅん?んじゃ、やるか」
二人は間合いを取ると、ゆっくりと構えました。それにしてもオルハってホントむちむちですね。え?関係ないって?アラごめんなさい。
間。
「もうお終いか?」
カーシュは軽く息を整えつつクソ重い筈のアクスを軽々と肩に担いでいます。
「私の、負け、ね・・・・・・」
基礎体力の違いって奴でしょうか。オルハは肩で息をしながら座り込んでしまいました。
「悔しいわ。もし私が男だったらもう少し戦えたかもしれないのに・・・あら、ありがとう」
手を差し伸べられ、オルハは素直にその手を取ります。するとぐいっと引き起こされ、立ち上りました。
「ホント、羨ましいわ。私には片手で引き上げるなんてできないもの」
「そうか?お前にゃお前の戦い方があるだろ。身軽だし女にしちゃ腕っ節は強え。俺からしてみりゃその身軽さは羨ましいぜ」
お互い、暫く見詰め合うとぷっと吹き出しました。
「やあね、私とあなたを足して割れたらちょうど良かったのにね」
「そうだな。最強のコンビができるぜ」
でも、とオルハは軽く首を傾げてカーシュを見上げ、微笑みます。
「無い部分をお互いで補いつつ戦うのも素晴らしい事だと思わない?」
その言葉にカーシュもふと微笑み返しました。
「そうだな」
「私たちは体育会系だから」
言葉より、戦いの中での方がお互いを感じる事ができる。
「違いねえ」
オルハの言葉に、カーシュは笑いを零しました。
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