カーシュはセルジュとマージさんにお礼を言うと、アルニ村を出ました。
溺れ谷を歩いていると、道の向うから見覚えのある人物が歩いてきました。
「あれって確か・・・・・・」
セルジュと同じ青い髪にバンダナを巻いたそのオジサマ。ええ、勿論ワヅキさんです。
「おや、久しぶりだね、カーシュ」
ワヅキがこちらに気付くと、にこりと笑みを浮かべます。
セルジュと知り合って、その延長線上で知り合いとなったワヅキさん。
セルジュとはまた違った魅力ですね。ハイ。
「もしかしてアルニ村に行っていたのかい?」
「ええ、御子息、細君と共に昼食を御一緒させて頂きました」
滅多に使わない敬語でカーシュが応じると、ワヅキはくすりと笑いました。
「そんな畏まらなくても良いんだよ?」
「はあ」
「それに、私はいつもの君が気に入っているんだ。自然体でいてくれた方が私としても嬉しい」
悪戯めかして言われ、ついカーシュも笑いを零してしまいます。
「もう帰るのかい?」
「ええ」
ワヅキは「それは残念だ」と言い、カーシュを手招きします。
「?」
カーシュが招かれるままワヅキのすぐ目の前まで来ると、ワヅキは彼の手を握り、指を絡めました。カーシュは一瞬目を見開いたものの、すぐに微笑して同じように手を握り返します。
「今度は、二人で逢おう」
「はい」
二人は触れるだけのキスを交わすと、絡めていた指を離し、それぞれの行き先へと足を向けました。
秘密の恋愛も、それなりに楽しかったりしました。

 

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