大きな足跡を辿る小さな足跡





何だろう。


目覚める寸前の、あの、ぼうっとした気分。
それが、ずっと続いているような、そんな気分。


誰かに、抱き留められた。


懐かしい気配。


「おい」


…懐かしい声。


「おい!」


オヤ…ジ……?


何、焦ってんだよ、って感じの声。
アンタらしくない、心配そうな声。

薄らと重い瞼を持ち上げると、その気配がほっとした様な感じがして、その気配は消えた。
待てよ、と言おうとしたけれど、声は出なかった。


ふわふわしてる。


体の輪郭が無くなるような、そんな感じ。


なんだろ、俺、浮いてる。


俺の遥か下に、ザナルカンドの街が広がっていた。
あれから、どうなったんだろ。
俺、どうなったんだろ。
何で空飛んでんだろ。
ていうかここ何処なんだろ。
ザナルカンドみたいだけど、何か違う感じ。


今更気付くのもアレだけど、目の前には炎を纏った岩が幾つも浮かんでいて、俺はそれをぼけーっと見てた。
これ、エイブズのチームマークだ…。
…違う、これは……オヤジの自作マーク。ジェクトのJを元にした、アイツらしい鋭いマーク。
オヤジが消えちまってからは、オヤジの功績を称える証としてチームマークになったんだっけ…。


あれ?
じゃあ、やっぱさっきの声は…。


(?)


呼ばれた気がして振り返ると、すぐ側にスタジアムの残骸みたいな所があって、その真ん中にオヤジがいた。
腕を組んで、じっと俺を見上げてる。
もう、何が何だかわからなくなってきて、とにかくオヤジの所まで泳いで。
でも、近付くにつれてオヤジの姿はぼやけていって。


そこにたどり着く頃には、立っているのはオヤジじゃなくて、昔の俺がいた。


まだ髪も茶色に近かった頃。
きつく拳を握り締めて、目に涙を浮かべて俺を睨んでる。





大嫌いだ。





子供の俺の声は聞こえ無かったけど、口の動きがそう言ってた。







ジェクトなんか大嫌いだ!







俺は急激に眠くなって、意識を手放した。






ヒトリニシナイデ





ダレカ、ソバニイテ











……アーロン……













(2002/06/20/高槻桂)

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