ヒューシード




マカラーニャの旅行公司に戻って来た一行はこれからの予定を話し合っている最中だった。
「あれ?どうしたのティーダ」
そんな中、がたり、と突然ティーダが立ち上った。
「あ、ちょっと散歩行って来るっす」
にこっと笑うティーダ。
「一人で?夜は危ないよ?」
「すぐ帰ってくるからだーいじょうぶっすよ!」
外へ行く、と言うティーダに一瞬、ヒューシードの性質が皆の頭を過ぎった。
だが、見る限りティーダは至って普通だ。
これなら大丈夫だろうとユウナが「気を付けてね」と声を掛けた。
「ん、じゃあ行ってくるっす」
「待て」
くるっと踵を返そうとしたティーダに制止の声が掛かる。
声の主は言わずと知れたアーロンだ。
「何すか?」
「何故外へ行きたいんだ?」
「は?だから、散歩に行きたいなーって思ったから…」
「本当に散歩に行きたいのか?よく考えてみろ」
しつこくそう言われ、ティーダは渋々考え込んでみる。
お題は勿論「どうして自分は散歩に行きたいのか」だ。
「……あれ?」
そう考えてみて、ティーダは首を傾げる。
「…なんで俺、外に行きたかったんだっけ?」
ティーダの言葉に、皆の視線が集まる。
「お前が行きたいと思ったのか?」
「……違う…俺は、明日の事考えてて、そしたら突然「外へ行きたい」って思って…ううん、そう感じた…んだと思うっす。それで、外へ行かなくちゃって…」
ぽつぽつと語るティーダにやはり、とアーロンは溜息を吐く。
「ヒューシードだな。このまま放っておいたら失踪していただろう」
「うわ…」
淡々と告げるその事柄に、ティーダは薄ら寒いものを感じて顔を顰めた。
「でもぱっと見、ティーダ、いつも通りだったよ?」
それに全く気付かなかった他のメンバーを代表してリュックがアーロンに問う。
何処が違ったのかと。
「簡単な事だ。コイツは暗い所が苦手だ」
「ちょっ、ばらしてんじゃねえよ!」
自分の秘密をばらされたティーダはかぁっと赤くなる。
「第一、何処か行くのにコイツが俺を誘わん筈が無い」
「アーロン!!」
更にしれっとして言うアーロンの腕を、ティーダは喚きながらポカポカと叩いた。
ああ、そういう事。
得たりと一同は頷く。
御馳走様。




(何だか生温い感じで続く)



(2002/04/10/高槻桂)

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