JE TE VEUX





ティーダの視線は、ある一点で止まっていた。

「ねー!早く行こうよー!!」
言うなれば、ここは雷とリュックの悲鳴が轟く雷平原。
「んー……」
完全に生返事を返すティーダ。
更に言うなら、避雷塔からちょっぴり離れていちゃったりもする。
幾ら全員雷無効又は吸収のアビリティが付いているからと言っても、モンスターも集め終ってさて旅行公司に戻ろうか、という時なだけにリュックはさっさとこの場を立ち去りたかった。
「ねえーーぇってっばぁ!」
装備した武器(ダメージ限界突破付)でいっちょかましてやりたい所だったが、視界の端に赤い衣が移っていたのでそれは何とか留まった。
「なあ、アレ、何?」
ちょい、と指差すその先を見ると、遠くのサボテンダーの石碑の陰に見え隠れする蛙の姿。
「何って蛙じゃん!」
そんな事どうでもいいから早く帰ろうと騒ぐリュックに、だって、とティーダは尚も言い募る。
「あれ、でかいっすよ?」
確かに石碑の大きさと比較してみて、ティーダの膝下辺りまであるだろう。
しかも二本足で立っている。
しかも色はショッキングピンク。
しかも愉快そうに踊っている。
見るなと言う方が無理である。
「そんなモノより敵だ。ぼうっとするな」
「え?あ、うっす」
アーロンの声にはっとしてティーダは浮遊する小鬼やエレメントに向き合い、剣を構えた。




「なんっじゃこりゃーーー!!!!!」



雷の轟音に勝るとも劣らぬ絶叫が響き渡ったのは、その数分後のこと。
初めて通った時とは違い、それなりに強くなっていたので倒すこと自体はあっさりさっくりと終わった。
が、ここで思わぬトラブルが発生。
先程のピンクの蛙が何時の間にかティーダの真後ろに居たのだ。
それに一同が気付いた時は既に遅し。
「ケロ」
蛙特有の鳴き声と共にペッタンコ、とティーダの脹脛にタッチ。
「へっ?」
ティーダがきょとんと足元を見下ろしたそこにあったのは、足元より遥かに近く、サスペンダーをぐっと押し上げるふくよかな膨らみを宿した胸。
所謂乳房と言うヤツだ。
「なっ……」
「ティーダが女の子になっちゃった!?」
そしてユウナの叫びに導かれるように先程の絶叫へと続く。
「胸が生えた?!」
混乱気味に叫びながらがしっと己の胸を鷲掴みにする。
ある。確かにある。
「何で?!」
むにゅっとした感触も俄かには信じられず、更に確かめようと上着を勢い良く肌蹴た。
「「きゃっ!」」
「うわっ!」
「!!」
「あーあ…」
「……」
ぷるんっと外気に曝された膨らみに、多種多様な反応が返って来た。
ユウナとリュックは年頃の女の子らしく可愛らしい悲鳴を上げ、ワッカは耳まで一気に赤くなり、そんなワッカをアーロンが即座に切り捨て、それを見たルールーがやれやれと溜息を吐き、キマリが倒れたワッカにフェニックスの尾を使う。見事な連携プレイだ。
「ぅわぁぁ〜…ホントにあるッスぅ〜…」
自分の身に起きていることで頭が一杯のティーダがそんなことに気付くこともなく、ひたすら自分の胸を鷲掴みにしている。
「全くお前というヤツは…」
アーロンはワッカが目を覚ます前にとティーダに近寄り、己の上着でティーダを包んだ。
「着ていろ」
「へ?何で…あ!そっか!」
上半身裸に躊躇いの無い元男の子、現女の子のティーダは漸く己の失態を察し、掛けられた上着に袖を通した。
ティーダの来ている上着の合わせにはボタンやファスナーなどの止め具が付いていない。その為、動けば当然見えてしまうのだ。勿論胸がだ。
そう、それは男にとって萌え要素爆発なのだ。
完全に曝け出されるより、服の陰から時折覗くのが萌えポイントだ。
更に言うなら全体が覗くのではなく下乳のみがチラッと。これ重要。チラリズム万歳。
………。
話を戻そう。
とにかくティーダの服では露出が高すぎるのでアーロンの上着を借りる事となった。
「さっきの蛙だな」
溜息と辺りを見回すが、あのショッキングピンクの蛙はとっとと逃げたらしく見当たらない。
「…そういえば」
ふとルールーが声を上げた。
「昔聞いた事があるわ。名前は確か「タッチ・ミー」で、触った相手を蛙に変えてしまう魔物がいるって。姿形はさっきのと同じ。色は黄色らしいけど、極稀にピンク色がいて、触った相手の性別を変えてしまうってね」
それにしても、とティーダを上から下まで見遣る。
今はアーロンの上着に覆われていて確認できないが、先ほど見た限りでは骨格単位で変化しているようだ。
元々すらりとした肢体だったが、当然ながら女のそれとは違っていた。細身ながらも確かに男の骨格をしていたというのに、今は腕一本取っても引き締まったそれでなく、ふっくらとした曲線を描いたものへと変わっており、女の子だな、と思わせている。
「…見事に変わってるわね」
「感心してないで何とかして欲しいっす…」
「無理ね。もう一度タッチされるしか戻る方法はないって言われているわ」
「マジっすか〜?!」
ティーダがガックリと項垂れると、やれやれといった溜息が頭上から振って来た。
「仕方あるまい。取り敢えず旅行公司へ戻るぞ」



アーロンの提案通り取り敢えず旅行公司へと戻って来た一行。
各々の割り当てられた部屋へ戻ろうとして、ふとユウナが声を上げた。
「そう言えば、キミとアーロンさん、部屋割りはどうしよう?」
「あ〜…」
問われたティーダはちらりとアーロンを横目で見る。
今までは女性陣、キマリとワッカ、アーロンとティーダで割り振られていたのだが、性別だけで言うなら確かに男女が同じ部屋、というのもどうかという気もする。
「じゃあ今日は私たちと一緒に寝る?」
「うーん……」
ユウナの申し出は嬉しかったが、彼女の後ろでわくわくとした目でこちらを見ているリュックが気になってやっぱいいや、と首を振った。
「えーー!!折角ティーダで色々遊べると思ったのに〜!!」
やはり人を玩具にする気だった様だ。そうなると女の子の格好をさせられるのは目に見えている。
「や〜残念残念!んじゃ、俺部屋行くッス!」
ティーダはそそくさとアーロンの腕を引き、リュックの不満気な声の残るその場を後にした。




「んっ…ちょ、待った!」
己の体に一人で慌てたり照れたりと騒ぎながらの風呂上がり、いつもの様に口付けられ、押し倒されたティーダはアーロンの体を突っぱねた。
「俺、いつもと違うんだって!」
「支障はない」
「俺的にはあるっつーの!!」
「どんな支障だ」
言ってみろと促され、よし来た例えばだな、と口を開けば出てくるのは沈黙だけで。
「………えーっと」
翌々考えてみればアーロンの言う通り、どんな支障があるというのだろう。
これでティーダが元々女で、男になってしまった、というのなら話は別だろうが、現在ティーダの肉体は立派な女の子。
ラブラブ(死語)な男女がさあ愛の営みをしましょうとなったら何が問題か。
「えぇえー……っとぉ……」
強いてあげるなら、声を上げまくって近所迷惑にならない様に、とか妊娠したくなかったらゴム付けようネvとかその程度だろう。
と言うより、そもそも突っ込まれる事に変わりはない。
「で?」
「そ、そう!途中で戻ったりとかしたら…」
それはそれで、良かった良かった〜という事で行為続行だろう。
「……も、いいッス…」
くはぁーと溜息を吐いて体の力を抜くと、初めからそうしていれば良いんだ、と言われてしまう。
「だって、んっ、ぅわ、ちょっ、」
胸元に滑らされたアーロンの手が、本来ならある筈の無い膨らみをやんわりと揉みしだく。
いつもとは違う感覚に、ティーダは戸惑いの声を上げた。
「…っ、んっ……ァッ…」
もう片方の手が内股を滑り、秘処に触れられるとびくりと体が揺れた。
「もう濡れているぞ?いやらしい体だ」
「っのエロオヤジ!」
くつくつと響く微かな笑い声にティーダは耳まで真っ赤になりながら目の前の肩をべちんっと叩く。するとその仕返しの様にきゅ、と陰核を指の腹で擦られ、ティーダはその指から逃れようと腰をくねらせた。
「やっ、それヤダッ、痛いっ…!」
まだ未発達な陰核は、その刺激を快楽より甘い苦痛としてティーダの瞳を潤ませる。
「なら、こっちはどうだ」
多少の抵抗はあるものの、自身の体液で濡れたそこは易々とアーロンの指を飲み込んだ。
「キツイな。やはり処女という事になるのか?」
「ばっ…!な、何言ってんっ、ぁ、」
ゆっくりと、次第に速く抜き差しされる指に導かれ、緩やかに訪れる快感の波にティーダはふるふると首を振る。
「痛いか?」
耳元で低く問う声に、ぞわりとした感覚がそこから一瞬にして広がり背を撓らせる。
「痛く、なぃ、んっ…」
アーロンの指の動きに時折混じる濡れた音がティーダの羞恥を煽り、ぎゅっとその瞳を閉じてしまう。
「ティーダ…」
思考が溶け掛けた頃、漸く指が抜かれ、唇に軽い口付けを落されたてティーダはそっと瞼を開けた。
「挿れるぞ」
「!」
両脚を更に開かされ、その中心に屹立したそれを押し当てられた途端、蕩けた思考が一気にクリアになった。
「わーっ!ちょ、ちょっと待った!!」
「…何だ」
ぐいっと肩を押し返され、アーロンが不満気な声を上げる。
「やっぱヤダ!挿れるの却下っす!!」
「……」
ここまで来てそれは無いだろう。
この状況でお預けは辛いんですけど。
男の無言の訴えに、ティーダは彼の胸板を突っぱねた己の両腕に真っ赤な顔を伏せる。
「だ、だってアーロンが…」
ぼそぼそぼそ……
耳まで真っ赤にしたティーダの声は一気に小さくなって聞き取れない。
「聞えんな」
「だってさ、この体でしちゃったらアーロンが…その……」
ぼそぼそぼそ……
「だから俺が何だ」
御預け状態に半ば苛付きながら問うても、ティーダは「う〜〜」と唸っているだけだ。
「…言うことが無いのなら挿れるぞ」
「ぅわ!ちょっと待っ、やっ、痛っ、あぁっ…!言う!言うからっ!」
押し当てられたそれの先端が侵入し、その押し開かれる感触にティーダは慌てて腰を引く。
「で、何だ」
「だから……その、やっぱ女の体の方が良いとか、思っちゃったりしたら…俺が男に戻った時、男の体なんてやだとか、その、」
「……」
またぼそぼそ声になってしまったティーダにアーロンはやれやれと溜息を吐いた。
「つまり俺が女の味を占めてお前を捨てるとでも思ったんだな?」
「……」
図星。
「ティーダ」
俯いて答えない愛し子のその名をいつもより幾分か柔らかな声で呼んでやる。
「重要なのは男か女かの問題では無い。お前がお前であれば、それで良い」
「アーロン……」
ティーダは朱に染まった目尻に口付けを落してくる男の背に腕を回し、抱き寄せた耳元にそっと囁いた。
「大好き」
その応えを告げるように、頬を滑る男の唇はティーダの唇に落ち、一層深い口付けを落した。






「どーこーぉだーぁあ〜…」
翌朝の雷平原に恨めし気な声が響く。
「でぇえてこぉおおいぃぃタッチ・ミィィィ…」
言わずと知れたティーダだ。
「うーん、居ないねえ…どこ行ったんだろ?」
「何で居ないんスかーー!!」
かれこれ数時間、全員で手分けして捜し続けていると言うのにさっぱり見つからない。
「別にそのままでも構わんだろう」
「構うっつーの!!」
十七年間男の子をやってきたのに、突然「今日からアナタは女の子です」と言われても納得できるわけが無い。
「どーこだー!!ピンクー!!!!」
ティーダ達が必死で岩陰などを探している間、彼らの遥か頭上。避雷塔の上でちょこんと座ったショッキングピンクのそれに気付くものは誰一人としていなかった。
「……」
ただ一人塔を見上げる、紅の衣を纏った男を除いては。


取り敢えず、「シン」を倒した時のティーダはちゃんと男の子だったことは明記しておく。






(END)

時折他サイトさんでミニマムネタを見かけるので、その影響か、性転換の原因はタッチ・ミーになりました。どうも私はミニマムとトードを一括りにしているようです。しかもFF10には出てきませんし。
えーっと、エロは最初、何も考えず書いていたらどこぞのポルノ小説のようになっていたので慌てて消しました。流石にこう、露骨なのはやばいッスよね、と思ったのでかるーくかるーくを目指したんですが、何となく無理だったようです。これでもかなりカットしたんですけど…アウトですか?(爆)
本当は翌朝アーロンがティーダに「やはり処女扱いだったな」的な事を言って「クソエロオヤジ!」ってしばかれるシーンもあったのですが、余りにもアーロンさんが「クソエロオヤジ」過ぎて消しました。(寒)
更に言うなら、全体的に所々マニアックだったり現実的だったりとワケのわからない作品に仕上がってしまいました。こんなモノを5000HIT超えのお祝いとして差し上げるなんて…寧ろお呪い…。
ふくこ様、こんなモノでも宜しければ受け取ってやって下さいませ。
これからも宜しくお願いしますねvv


(2002/05/24/高槻桂)

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