めたもる。




それを見つけたのは、リュックだった。
「ねえ、みんなちょっと来て!」
ティーダ達が呼ばれるままにわらわらと集まると、リュックは手にした球体を皆に差し出した。
「ねえ、これ、何のスフィアだろ?」
差し出されたそれは、確かにスフィアだった。
「アビリティに似てるみたいだけど…」
ユウナの言う通り、スフィアに浮かび上がる紋様はアビリティスフィアのそれに良く似ている。だが、それも何処か違う。
「ね、ね!誰か付けてみようよ!」
誰か空いてる所で止まってる人、居る?という声に各々は自分の現在のスフィアルートを確認する。
「私は駄目ね」
「私も…」
「俺も」
仲間たちが次々に駄目出ししていく中、一人だけ空きのある人物がいた。
「あ、俺空いてるッス」
現在位置を指差してそう名乗り出ると、リュックが嬉々とした声を上げる。
「よっし!じゃあチイに決定!」
「待て」
早速それをティーダに渡すリュックを低い声が遮った。
誰、だなんて思う者は居ない。言わずと知れた伝説のガード、アーロンだった。
「得体の知れん物を迂闊に使うのは危険だ」
いつも以上に眉間に皺を寄せ、アーロンはティーダを見下ろす。
先程までは何も言わなかったくせに、ティーダが付けるとなった途端これだ。
「心配なら心配って言えば良いのに」
素直じゃないんだからーと言う声の主を睨み付けると、「うわわっ」とリュックは慌ててユウナの後ろに隠れる。
「大丈夫だって!スフィアなら別に悪い方向には働かないって!」
な?と太陽の名を冠した少年に見上げられれば反論など出来る筈も無く。
「……どうなっても知らんからな」
結局折れたのはアーロンで。
「よっし!じゃあ、行くっす!」
皆の見守る中、ティーダがそのスフィアをスフィア盤に当てると仄かな光を放ってそれはスフィア盤の中へ吸い込まれていく。
「……アビリティだったみたいッスね?」
浮き上がった紋様はアビリティのそれと同じで、一同は残念の様なほっとした様な空気に包まれる。
「でも何だろ?「変身」って」
「さあ…初めて聞くわね…アーロンさん、何か知りませんか?」
ルールーの問いに、アーロンは否、と首を振る。
「俺も始めて聞く。…ティーダ、何処か不具合はあるか」
「ん〜…ないッス」
「ま、どんな物かは次のバトルで使ってみればわかるでしょ!」
「そっすね」
リュックの言葉にティーダはこくりと頷いた。


「お、モンスター発見!」
暫く歩いていると現れたスコル二体とフレイムプリン。
ティーダ、アーロン、ルールーが先陣を切って身構える。
「んじゃ、早速使ってみますか!」
低い唸り声を上げるスコルへの視線はそのままに、ティーダは先程覚えたばかりの技を発動させた。
「うわっ?!」
発動すると同時にティーダの体は眩いまでの光を発し、モンスターだけでなく一同もその光に怯む。
「ティーダ!」
一人サングラスのお陰で光の影響を受けなかったアーロンが声を上げると、光の中心で動く影が見えた。
「ティー…!?」
光が収まり、一同は固まった。
現れたのは、確かにティーダだ。
だが。

「今日もモンスターを倒して、スピラの未来にたっぷりご奉仕するにゃんvv」

年は五、六年若返り、幼い笑顔に猫耳に猫尻尾(リボンと鈴付き)、ルールーほどとは行かなくとも胸元のはだけられたピンクとレースの上着、ふわふわふりふりのこれまたピンクのスカート。
手にはハート型の武器らしき物まで持っている。
「にゃっ?!にゃんだコレー!!!」
しっかり決め台詞まで言ってから我に返ったティーダが絶叫する。
明らかに男が着る衣装ではない。
が、性質の悪い事にティーダはそれを着こなしていた。
似合いまくり。ワッカが後ろの方で鼻血を出しているがそれ所ではない。
「「か、可愛いーーーー!!!」」
ユウナとリュックの声がハモる。
「びっくりして尻尾が膨らんでる所とかすっごくカワイイ!!」
「「にゃん」だって!!可愛い可愛い!!!」
「ちっちゃいよ!ティーダがちっちゃいよ!!」
二人で手に手を取ってはしゃいでいる。
どうやら男どもが大きい物が大好きなように、少女達は小さな物が大好きのようだ。
「にゃんで…ってこんな事してる場合じゃないにゃん!!」
はっと我に返ってみれば、相手にしてもらえず放りだされていたモンスターたち。
「リボーン・ストロベリー・チェーック!!」
ちりんっとハート型のそれをモンスター達に向けると、まるで銃を発砲した時の様な衝撃が腕に走り、光球がモンスター達を直撃する。
「うわぁ…」
ぶわっと舞い上がる幻光虫。ティーダはたったその一撃で三体のモンスターを倒してしまい、感嘆の声を上げる。
「凄いにゃん…あ、戻った」
「ティーダ凄い凄い!!」
戦闘が終わると同時に元の姿に戻ったティーダの元に仲間たちが駆け寄ってくる。
「可愛いし強いしもう最高だね!!ね、おっちゃん!」
はっそういえば!とアーロンを見れば、彼はじっとティーダを見詰めている。
「え、えと…その…」
良い事をした筈なのに、何処か悪い事をしたような気分にさせられる視線にティーダは上目遣いでアーロンを見上げる。
「……もうあれは使うな」
ぼそりと呟かれたそれにティーダはきょとんとする。
「何で?…そりゃまあ恥かしいけどさ…」
「俺が嫌なんだ」
有無を言わさずそういうアーロンに、ティーダはむっとする。
「そりゃ確かに間抜けなカッコだけどさ!結構強いじゃん!」
「違うよティーダ。おっちゃんは可愛いティーダの姿を皆に見せたくないんだよ」
「はあ?」
そうなのかとアーロンを見上げると、その当人はつーんとそっぽを向いてしまう。
「それならそうとちゃんと言えよな!」
「知らん」
くつくつと笑ってその赤い裾を引っ張れば、つっけんどんな返答が返って来る。
照れているのだと長年の付き合いで分かるティーダは更に笑みを深くしてその腕にしがみ付く。
「アーロン大好きッス!」
その後、「変身」が使われる事はなかったという。






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アホです。すみませんすみませんすみませんすみま(以下略)
えー、なかよしか何かで連載されていて、今度アニメ化する「東京ミュ◎ミュウ」という漫画のネタをパチらせて頂きました。本屋って、バックヤードに在庫があるんですが、それのビニルパックをまだ掛けていない時に(こっそりと/爆)それを読み、このネタが浮かびました。
ちなみに独り言でこれを掲載した時も書きましたが、この漫画、好きじゃないです。何と言うか、余りにも稚拙すぎで。ファンの方すみません。
本当はこの後旅行公司にて、アーロンさんが
「スピラの未来より俺に奉仕しろ」とか抜かすんですが。(爆死)しかも更にその後にあの姿でエロとか。(切腹)
ショタですか。はいそうです。(認めるなよ)
ティーダに限り、ショタはOKです。認めます。許可出します。(何)
(2002/03/21/高槻桂)

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