4月16日の花:ケマンソウ=あなたに従います
バイエルライン/銀河英雄伝説




私、カール・エドワルド・バイエルラインは誰よりも素晴らしい上官と巡り合えたものと確信している。
我が主の名はウォルフガング・ミッターマイヤー。
収まりの悪い、けれど見苦しくない蜂蜜色の髪、活力に輝くグレーの瞳。小柄だがそれを感じさせないほど凛とし、引き締まった肢体。
上官に媚びる事も下士官を見下すことも無く、私たちの恒星なのだ。
閣下のために働くことが何よりもの幸せなのだ。
閣下がよくやった、と肩を叩いてくれた瞬間、私はヴァルハラへと召されそうなほどの幸福感を感じる。
そして閣下の官邸に招かれ、愛らしい細君の料理をつまみにワインを飲み交わす極上の幸せ。
ああ、私は貴方に一生ついてゆきます!!
……だがしかし。
一つだけ、気に食わないことがある。
もちろん閣下自身のことでもその細君の事でも有り得ない。
この帝国の双璧と謳われる、閣下の親友、オスカー・フォン・ロイエンタールの存在だ。
軍人としてのその手腕も素直に素晴らしいと思う。その面では敬意を払っている。
彼自身の性格や容姿に含むところがあるわけではない。寧ろどうだっていい。
問題は、彼が悉く我がミッターマイヤー元帥閣下に纏わりついているという事だ。
報告ついでに閣下の官邸へ向かった時も、書類を届けるために閣下の執務室を訪れたときもそうだ。
何故お前が居る。
当たり前のようにロイエンタール元帥が居座っている。
自分の職務はどうした。
思わずそう問い質したくなるほど閣下のお傍におられる。羨まし…ゲフゲフ。
何より気に食わないのは、彼が私に対し、それはもう勝ち誇った目で見る事だ。
更にはこれ見よがしにべたべたべたべたと何かに理由を付けて閣下のお身体に触る始末。
許すまじ、オスカー・フォン・ロイエンタール!!
羨ましいぞ、オスカー・フォン・ロイエンタール!!!
…はっ!いかん!!お茶の時間だ!!
閣下に美味しいコーヒーをお持ちしなければ!!
近侍になど任せておけるか!私がお淹れする!!

 

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