4月29日の花:カルセオラリア=あなたを伴侶に
セドリック、ジェム/ハリポタ夢




「パートナー、ですか?」
スプラウト教授の言葉にセドリックは小首を傾げた。
「まだ決めてませんが…」
「そう、まだ時間はあるから急がなくてもいいのよ」
セドリックがちゃんと気に留めていることに安心したのか、スプラウト教授は二度ほど頷いた。


「…ということなんだけどね」
スプラウト教授に呼び止められてから数時間後。
中庭のベンチでセドリックは傍らの少年にそのことを打ち明けていた。
「誘うって言ってもなあ…」
セドリックよりに学年下の少年が首を傾げると、その艶やかな黒髪がさらりと揺れる。
「セドリックなら誘わなくても女の子の方から誘ってくるんじゃないかな?」
「うーん…」
暫く唸っていたセドリックだったが、やがて一つため息を吐いて肩の力を抜いた。
「いっそジェムと踊れたら良かったのに」
「僕?」
傍らの少年、ジェムはきょとんとしてセドリックを見た。
「うん、だってパートナーだよ?一晩だけって言っても、やっぱり気の許せる人と踊りたいよ」
「僕もセドリックと踊れたら楽しいだろうなあ…」
「ジェムはもうパートナー、決めたの?」
「うん、イリーナ・ダイソンっていう同じスリザリンの子」
そっかあ…とセドリックは二つ目のため息を吐く。
するとジェムが「そうだ!」とその表情を可笑しそうに輝かせた。
「僕が女装してセドリックと踊るってのは?」
「ジェムが?」
「そう、僕、自分で言うのも何だけどそれほど体格良いわけじゃないし、化粧してウィッグつけちゃえば気付かれアイタッ」
ごすっと脳天に衝撃が走り、ジェムとセドリックは驚いてジェムの背後に立つ人物を見上げ、そして固まった。
「と、父さん…」
そこに立っていたのは、分厚い本(恐らくこれで殴られた)を片手にジェムを苦い顔で見下ろしているセブルス・スネイプだった。
「冗談だってば、もう!」
ジェムが頭を撫でながら抗議すると、スネイプは「余りにも馬鹿なことを大声で口にするからだ」と吐き捨てて踵を返して立ち去ってしま
った。
「父さんの石頭」
スネイプの後姿をぶつぶつ言いながら見送り、ジェムはセドリックへと向き直った。
「……」
振り返った先では、セドリックが心底恐縮した表情をしていて、ジェムは目を数度ぱちぱちと瞬きさせた。
そして二人の視線が絡み、
「「………ぷっ」」
二人は同時に噴出し、声を上げて笑い出した。

 

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