5月18日の花:シラー=悲しい、哀れ
上条、内藤/CASSHERN




老人は大抵が傍観者だった。
内藤が自ら脚を開いて体や自身を弄くり高め、射精する姿をただ見ている。
時折手を伸ばし、はたまた唇を寄せては内藤の乱れる姿を間近に見つめる事もあったが、それでも矢張り傍観者の域に属していたと内藤は思う。
だから、どうすれば良いのか分からなかった。
「薫ッ…」
内藤の脚を高々と抱え上げ、最奥を貫く青年は何度も内藤の名を呼びながら唇を、舌を貪ってきた。
あの老人に口付けられたことはない。
ここに至って漸くそれに内藤は気付いた。
それに応えながら、内藤は戸惑っていた。
彼の行動にではない。
口内を貪られる度、沸き上がる衝動。
体内に精を吐され、背筋が震えた。
荒い息遣い。
老人は常に平静だった。
だが、目の前の青年は内藤と同じように息を弾ませ、汗を滲ませ、その整髪料で整えられた髪を乱していた。
そして繋がったまま彼は徐に内藤の体を掻き抱いた。
きつく、背骨が軋むほどきつく抱きしめられる。
ああ、またあの衝動が。
内藤は己の首筋に顔を埋める男の息遣いに目を閉じる。
このまま、この男を抱きしめてしまいたい。
彼が抱きしめるのと同じ、否、それ以上の力で抱き返したい。
沸き上がる衝動にぴくりと指が動く。
けれど仕える者として過ごした十年で培った理性がそれを押し留める。
許可を得ていない行動をとってはならない。
そして自ら乞う事もしてはならない。
「薫、薫…」
何故苦しげに私の名を叫ぶ。
ああ、もうわけがわからない。
「薫…!」
何故何も命じない。
一言、命ずるだけで善いのだ。
私はお前の望む通りに動こう。
その間、私はただの上条の使用人で在れるのに。
そうすれば、私はこの理解できない理不尽な苦しみから開放されるのに。

 

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