5月22日の花:ナデシコ=純愛
キャシアス/奴隷市場




キャシアスはどちらかといえば鈍感、加えて純情の部類に入る。
少なからずとも、彼は感情―特に恋愛面―の機微を察する事は不得手だ。
その為か、今ごろになって漸くその問題と直面する事となった。
問題というのは、恋人、ジャラルディとの関係に付いてである。
え?ジャラルディとキャシアスって敵同士じゃん?

そんな事はどうだっていい。

二人が敵同士だとかキャシアスの使命だとかそもそもの戦争中だとか奴隷市場本編の話だとかは、この際無視を決め込む事にする。
とにかく二人は恋人同士である。
さて、そうなると二人が出会う切っ掛けとなった少女はどうなっているのか。
キャシアスを兄さま、ジャラルディを天使さまと慕う少女、ビアンカ。
彼女は勿論二人の愛情を一身に受けて幸せ一杯で毎日を満喫している。
はて、兄と言えば彼の事を思い出す方もいるかもしれない。
そう、ビアンカの実兄の存在だ。
彼の事は…まあ、無かった事にした
中途半端な腹黒優男は幾らビアンカに善く似た美形でも当店では取り扱っておりません。
ならばカルガラとしてはどうか。
問答無用で却下に限る。

さて、話を戻すとする。

キャシアスとジャラルディの関係に付いてだが、何を隠そう彼らは未だにキス(しかも挨拶の際のもの)から先に進んでいないのだ。
その「お付き合い」と来たら、子供の方が余程早熟だと言えよう。
とは言っても二人ともれっきとした成人男性。
相手に対して性的欲求が無いわけではないのだが、だからと相手を褥に誘えるほどの度胸も無く、結果、ファルネリウス辺りが見たら蕁麻疹でも起こしそうな事態になっている。
そんな二人の片割れ、キャシアスが何を一人で悩んでいるかと言えば。
もしそういう行為に及ぶ事になった場合、自分が下になるのだろうか、と。
有り体に言えば自分が突っ込まれる側なのだろうか、という事だ。
まあ普通に考えてもキャシアスが受け入れる側になるのだろう。
明らかにジャラルディの方が体格は良いし、身長だってキャシアスの頭一個分は余裕で高い。
だがキャシアスとしてはジャラルディの顔立ちはそんじょそこらの女性よりはるかに整っていて美しいと思っている。これは欲目ではなく実際そうなのであるから異論はないだろう。
だからと、キャシアスはジャラルディの方とて受け入れる側になる可能性があるのだと信じていたいのだろう。
だがしかし、そんな微かな望みを打ち砕くようだがキャシアスも十二分に愛くるしい。
本人に自覚はないが彼の周りの人々は口を揃えてそう証言してくれる事だろう。特に親友殿が。
だが非常に残念な事にこの場にファルネリウスの姿はなく、キャシアスの儚い希望を打ち砕いてはくれなかった。
因みに必ずしも挿入しなくてはならないというわけでは無く、寧ろオーラルのみの方が多いと言っても善いのかもしれない。
だが、女とのセックスにも一杯ヽなキャシアスが男同士のあれこれを知っているわけも無く、とりあえず男女のやり方に自分たちを重ねてみた結果、そういう問題にぶち当たってしまったのだろう。
一人悶々と考え続けていたようだが、結局知識の少ない自身だけで解決する事は不可能だと結論付けたらしく、キャシアスはビアンカと共に駿馬に跨った。
向かうはカラブリア邸である。
ファルコのその後は聞いてやるな。可哀相だから。

 

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