5月30日の花:ザクロ=子孫の守護
??/CASSHERN




おいで、御伽噺をしてあげよう。
そう、私たちの守り神、キャシャーンのお話しだ。
遠い昔、この村は月を奉っていた。
村人たちは毎日欠かさずお供えをして、お祈りをした。
今日も無事に過ごさせて下さりありがとうございます、
明日も健やかに過ごせます様に、とね。
神様はちゃんとそれを見ていたんだ。
ある時、その月から神様が降りてきたんだよ。
それがキャシャーンだ。
キャシャーンはみんなにお礼を言った。
いつもお供えをありがとう、とね。
そして御褒美をくれた。
それは、とても強い生命の力だった。
怪我をしても忽ちその傷は塞がり、病気にもならない。
そんな生命力を授けて下さった。
今ではもう禁句となった、オリジナルヒューマン。
その誕生の瞬間だ。
村人たちは喜んだ。
キャシャーンが月に帰ってからも変わらずお供えをし、お祈りをし続けた。
そうして人々は長い間、争いも病も大きな怪我もなく過ごしていった。
けれどある時、他の部族の人間がこの村にやってきた。
お互い、自分たちと違う文化とふれあうのは始めてだった。
やってきた人々は、太陽を崇める部族の者たちだった。
月崇拝を否定する彼らに村人らも太陽崇拝を否定した。
人が何を信じ、崇めるかは人それぞれだ。
けれど、この頃にはまだそう思える人間は少なかった。
口論が小競り合いを呼び、暴力を呼び、やがて戦を生んだ。
それを月から見ていたキャシャーンは嘆いた。
何故同じ人間同士が争うのかと。
キャシャーンは今一度降り立った。
けれど、神様というのは欲の無い心でお仕えしている者にしかその姿は見えないのだ。
だから怒りと憎しみに囚われてしまった村人たちにキャシャーンの姿は見えなかった。
勿論、キャシャーンを信じていない太陽崇拝の部族の者にも見えはしない。
いい加減にしろ、とキャシャーンはとっても御怒りになった。
ほうら、ご覧。
キャシャーンが裁きの雷を今にも落とそうと振りかぶっている。
争う人間たちに鉄槌を下そうとした。
けれどキャシャーンはその雷を落とさなかった。
己の愛した子供たちにそんな酷い事は出来ないと躊躇ったのだよ。
けれど、それでも人間たちは争いを止めない。
結局、キャシャーンはどちらを選ぶ事も出来ず、そのまま石像と化してしまった。
ははは、そうだな。
だが、あの石像がいつからあったのか、誰が造ったのか。
それはこの村の誰も知らぬのだ。
だから本当にそうなのかもしれんぞ。
さて、石像になってしまったキャシャーンの姿に村人は深く反省した。
けれどどれだけ反省しようと、どれだけお供えをして祈ろうと、
キャシャーンが再び彼らに話し掛けてくれる事は無くなってしまった。
そしてその加護も少しずつ、代を重ねていく間に薄れていってしまった。
争いなぞ、悲しみと憎しみを生むだけだ。
暖かく優しいものなど生まれはしない。
戦は、哀しいな。

 

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