5月31日の花:ハナショウブ=優しい心
??/CASSHERN




さて、我らが守り神のお話しをしてやろう。
いやいや、この前の話にはまだ続きがあるのだよ。
ある時、石像の足元に赤子が捨てられていた。
村人の一人がその赤子を引き取り、育てたのだが、驚いた事にその赤子は色という色が無かった。
肌は透き通るように白く、髪も雪のように白い。
その上透明な瞳が血の色を透かせるものだからそこだけが赤い。
アルビノの女の子だった。
十数年後、その子はとても美しく優しい娘に育った。
だが、その子は眼が見えず、言葉も話せなかった。
どうやら生まれつきのものだったらしい。
その代わりに、普通には見えないものがその子には見えていたそうだ。
病が見える、というのかね。
この人は肝臓が悪い、とかあの人は心臓、といった具合にな。
人々は、この娘はやはりキャシャーンの御使いなのかもしれないと思った。
娘の透明な瞳を通してみんなの様子を伺っているのではないだろうかとね。
だけどある日、その娘がいなくなってしまった。
忽然とその姿を消してしまったのだよ。
村の人々がどれだけ探そうと娘は見つからなかった。
結局、その娘がキャシャーンの使いだったのかどうかも分からず終い。
ん?それでお終いだ。
本当にその娘がキャシャーンの使いであったなら、何のために姿を現したのか。
そしてどうして突然その姿を消したのか。
誰にもわからんのだよ。
キャシャーン自身も何も語ってはくれない。
なぁんにも、わからんままなのだよ。
この戦争が始まるよりもずっとずっとずうっと昔の話さ。

 

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