6月2日の花:ツキミソウ=自由な心
上条、薫/CASSHERN、観用少女ダブルパロ




それは、私が十五の年を迎えた頃の事だ。
父がプランツ・ドールを購入した。
今まで興味を示した事の無かった観用少女を何故今ごろになって、と訝しんだのだが、その父の手をそっと握り締めてやってきたプランツの姿に目を奪われた。
それは、甘い香りを纏う少年のプランツ・ドールだった。
どうやら父がもののついでに立ち寄ってみた所、見事にこのプランツのお目に適ってしまったという事らしい。
プランツ・ドールというものは生意気にも自分で主を選ぶ性質を持っている。
つまり、プランツは自分の気に留まらない相手には目を覚ます事も無いのだ。
中には目を覚ます程度の相性であっても愛情を注ぐ内に懐いていくプランツも居るが、それでも矢張り目覚めさせるという最低ラインはクリアしなくてはならない。
そして最高級のプランツになるとそれこそ自我が強く、自分が気に入った相手にしか絶対について行かないという。
刷り込みのようなそれはメンテナンスに出さない限り解かれる事はなく、プランツにとって絶対的な事の様だった。
父が連れてきた少年型のプランツも、見るからに最高級レベルのものであると知れた。
父の何を気に入ったのかは知らないが、そのプランツは穏やかな笑みを浮かべて父の隣を歩いている。
だが、私の前に立ったそのプランツの表情は、いつの間にか無表情になっていた。
プランツは自分に好意を持っていない相手には笑顔を見せないと聞いた事がある。
人の愛情を糧に生きるプランツは、何よりそれに敏感なのだ。
「プランツ・ドール『藤華薫』だ。薫、と呼んでやれ」
薫と名付けられたプランツは、ただ無表情に私を見ていた。
きっとプランツを見下ろす私自身が、こんな顔をしているのだろうと何となく思った。

 

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