6月4日の花:アカンサス=離れない結びめ
ブライ、鉄也/CASSHERN




ふと鉄也はその疑問を口にした。
「赤が好きなのか?」
唐突な問いかけに、ブライの目が微かに見開かれる。
モノクロォムな色合いを好む鉄也から見れば、赤のローブを纏うブライの姿は、有り体に言うなら派手に見えたのだ。
そんな視線を受け止めたブライは、やがて微かに苦笑した。
「好き…なのだろうな」
曖昧な応えに鉄也は小首を傾げる。
鉄也、と男が問い返す。
「赤は、生命の色だと思わないか」
生命?
鉄也は訝しげな顔をする。
「そう、この全身を巡る血の色。鮮やかな赤。生命の色」
まるで詩を朗読するように彼は言葉を紡ぐ。
「そして鉄也、お前が纏うは白。白は何の色だと思う」
鉄也は考え込む。
黒なら、暗闇の色と答えただろう。
けれど、白。
鉄也にとって、白とは色の無いものを現す言葉だった。
透明でも有色でもない、その間の何も無い色。
それが白。
「そう、それが白という色だ」
ブライが微かに微笑む。
「透明の様に何も無いわけではない。しかし、他の色の様に存在を主張するわけでもない」
魂の色だ。
「魂?」
「そう、生まれ落ちたばかりの魂の色」
何かを知るごとに少しずつ、様々な色づいていく可能性を秘めた色。
それが白。魂の色。
「何色にでも生れる色だ」
ブライは自嘲気味に告げ、その眼を閉ざした。
沈黙が訪れる。
「…赤ん坊はさ」
不意に鉄也が呟く様に言う。
「生まれた時、確かに真っ白な魂なのかもしれないけれど、でも、母親の血と羊水で汚れて生まれてくる」
ブライがはっとしたように見開き、鉄也を見る。
「白が一番始めに知るのは、赤なんだと思う。だからおめでたい時には紅白だとか…ってワケがわからないな。うん、すまない、無かった事にしてくれ」
「鉄也」
照れたように苦笑して肩を竦める鉄也をブライはそっと抱き寄せた。
「鉄也、私はもう、お前さえいればそれで善い」
隙間の無いくらいその体を掻き抱く。
「何だ、どうしたんだ突然」
鉄也が然程深い意味を持ってそれを口にしたのではない事は分かっている。
けれど、ブライにはまるで、自分が鉄也の傍らに在る事を許されたような気がしたのだ。
「鉄也、私の傍にいてくれ、鉄也、鉄也」
「何だよ、いるよ。傍にいる。どうしたんだ、ブライ」
「鉄也、鉄也、鉄也…」
何かを確かめるように何度も何度もその名を呼び、ブライは鉄也を抱きしめ続けた。

 

赤と白。混ぜたらピンク。(爆)

 

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