6月11日の花:スカビオサ=朝の花嫁
博和、司/BAD BOYS




朝日に照らされ、司は目を覚ました。
「ふあああ…」
大あくびをすると軽い頭痛と悪心、そして目眩に襲われる。完全に二日酔いだ。
「……」
殆ど寝ている思考でのろのろと身を起こす。
全身に走る鈍い痛み。
「…?…」
誰かと喧嘩でもしたのだろうか。
自分の体を見下ろし、ぎょっとする。
「なんで裸なんじゃ…」
司に裸で寝る習慣はない。が、何故か自分は素っ裸で寝ていたらしい。
体には無数の痣がある。やはり誰かと喧嘩したようだ。
誰と?
昨夜の記憶を辿ってみる。
が、陽二たちと飲みに行き、調子付いて二軒、三軒、そして四軒と重ねていったところまでは覚えているのだが、そこからの記憶が全く無い。
「なあ、ワシ…」
いつものつもりで隣で寝ているだろう陽二たちに話し掛け、そして漸く司は自分のいる場所が彼のアパートではないことに気付いた。
「……どこじゃ、ここ」
見慣れない、明らかに男の部屋と分かる散らかった部屋。
どうりで寝心地が違うような気がすると思えばいつもの布団ではなくベッドの上。
そして。
「……げ」
壁に掛けられた、嫌というほど見慣れたナイツのロゴの入ったスカジャン。
そこから導き出されるのは。
いやいやいやいやいや。
司は慌ててそれを否定した。
何もナイツだからってヤツとは限らないじゃないか。
他の誰かかもしれないし、うん。
だがふと見つけてしまった写真立て。
「ぬああああ…」
しっかりヒロとエリカのツーショットだったりした。
司は頭を抱えて唸った。
何がどうなっているんだ。
ヒロと喧嘩をしたというだけなら何も問題はない。
が、何故自分がヤツの部屋で、しかもヤツのベッドを占領して、あまつさえ素っ裸で寝ているのか。
………。
腕を組んでじーっと考え込んでいると、不意に玄関の開く音がして誰かが入ってきた。
「おう、目ぇ覚めたか」
にやにやと卑らしい笑みを浮かべながら入ってきたのは、案の定ヒロだった。
「なんでワシがワレんちにおるんじゃ」
「覚えとらんのか」
さっぱり、と首を振るとヒロは更に可笑しそうな笑みを浮かべた。
「ほぅか、そらあ残念じゃのぅ…久々に燃えたっちゅーんに。ケンカも、ベッドの上でも、の」
その瞬間、司の顔は正に埴輪だったと後にヒロは語る。

 

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