6月12日の花:ニガヨモギ=冗談、からかい
博和、司/BAD BOYS




神様、謝ります。
確かに昨日、飲むぞー!わー!の勢いで六軒くらいハシゴしました。
最後の方、自分でもちょっとヤバイかもとか思ってました。
それでも飲み続けてしまいました。認めます。謝ります。
謝ります、から。
「なんやと…?」
この状況を、夢だと言って下さい。


「顎とケツは大丈夫かァ?」
「ど、どういうこっちゃ」
恐る恐る問い返す司に、ヒロはにやにやとした笑みで告げた。
「ワシのビッグマグナム咥えこんだからのぅ」
ワシのビッグマグナム咥えこんだからのぅのぅのぅ…(エコー)
「ううううう嘘じゃーー!!アホ抜かすなアホンダラァァ!!」
「ならワレは顎も腰も痛ぅないんかい、お?」
勝ち誇ったようなヒロの言葉に司は一瞬詰まる。
確かに顎も腰も痛い。ただしそれはそこだけではなく、全身痛い。
「ケンカん時のもんじゃろがー!!」
「さあてのぉ…どうじゃろうなあ…?」
ちら、と落とされたヒロの視線につられて司の視線が床へ向けられる。
「ヒイイ…!!」
ざわっと一瞬にして全身に鳥肌が立ったのが分かる。
服と一緒に散らかっている、いくつかの丸められたティッシュ。
これ見よがしにそのティッシュの間からコンドームらしきものがちらりと覗いている。
「嘘じゃあああああ!!!」
「ぎゃーっははははは!!!」
頭を抱えて悶える司をヒロは指差して大笑いしていたが、不意に背後から殺気を感じて振り返った。
「ヒィッ!」
そして一気に竦み上がる。
そこに立っていたのは。
「…ヒロ、どういうこっちゃ説明しんさい」
静かに、それでいて濃厚な怒気を孕んだエリカが仁王立ちしていた。
「女が引っかからんからてまさか男に、しかも司くんに手ぇ出すたあ…覚悟できとるんやね?」
「エエエエリカ!誤解じゃ!これはナンパ邪魔された腹いせに…」
「…ナンパ?」
「や、いやいやいや、そうやのうてな!!司が付きまとって…」
「お持ち帰りをした、と」
「そーやのーて!!」
「なぁにが違うんじゃワレェ!!」
宥めるどころか火に油を注いでしまう結果となり、ヒロは慌てて司を振り返った。
「おい、つかっ…」
振り返った先では、何時の間にか服を着込んだ司が勝手に何処かに電話をかけていた。
「あ、寿?どうしよう、ぼく、ぼく、ヒロにお婿さんにいけないカラダにされちゃ」
「ばっ!てめえ何電話しとんのじゃワレ!」
「ぎゃー!犯されるー!!」
慌てて受話器を奪って叩き切って拳を振るうがあっさりと司に避けられてしまう。
「冗談だつってんじゃろが!」
「だってボク、久美ちゃんのお婿さんになれないーってものすごーく落ち込んだんだもーん」
わざとらしくお坊ちゃん時代の口調で司は拗ねてみせる。
「それなりのお礼、せなあかんじゃろ、なあ?」
「ほーやねえ…」
背後からの低いエリカの声にヒロはびくっと体を硬直させた。
「私だけの仕置きじゃ、足りんみたいやし…たまにはええんとちゃう?」
「エリカさんもやっぱそう思うよね〜」
前門の鬼、後門の虎。そして、
「おっ、来た来た」
地獄への特急便、マークUの排気音。
「ア、アハハ…」
その日から数日、ヒロの姿を見たものは誰もいない。

 

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