6月17日の花:ルリハコべ=変化 上条、薫/CASSHERNと観用少女のダブルパロ |
父はあっさりと薫を私に預けた。 自分の余命を察してか、それとも単に薫に対しての愛着が無いからか。 否、幾ら父が薫に素っ気無く見えていても後者は有り得ないだろう。 薫があれだけ父に懐いている以上、それに見合うだけの愛情を持ち得ている筈なのだ。 プランツはそういう生き物なのだから。 とにかく、薫は私の屋敷へとやってきた。 薫は一度だけ私を不安げな瞳で見上げ、それっきり俯いてしまった。 父の傍に居られないことが不安なのか、それとも。 私の傍に居ることが不安なのか。 言葉を持たないプランツはお気に入りのビスクドォルを胸に抱き、蹲っている。 環境に馴れれば、と思っていたのだが、どうやらそれは楽観であったと十日も過ぎる頃には思い知らされた。 ミルクはきちんと一日三回飲み干している。 けれど私が居ない間は殆ど眠って過ごしているらしく、偶に目を覚ましたかと思えばぼんやりとしているだけで一人遊びすらしなくなってしまったとメイドたちは告げた。 私が傍に居る時は起きているのだが、それでも矢張り変化は現れていた。 薫は、笑わなくなってしまった。 私がどれほど話し掛けてもただじっと、何処か憂いを帯びた視線で私を見上げている。 私にはそれが薫を父から遠ざけた事を責めている様に見えてしまう。 それでも、それでも私は薫が欲しかった。 私の傍に居て欲しかったのだ。 けれど、異変はそれだけでは止まらなかった。 「成長してきているだと?」 私の言葉にメイド頭の老女は控えめに肯いた。 「今までのお履き物があわなくなっているのです。お洋服の方も…」 確かに見ると薫の纏う洋服は僅かに裾や袖が足りていないようにも見える。 どうしたものか。 ミルク以外には専用の砂糖菓子や香り玉くらいしか与えていないのだから原因が分からない。 笑わないこともあり、父の傍に居られないことへのストレスからかとも思ったのだが、その割には肌荒れや髪のぱさつきは一向に見受けられない。 そもそも自分には薫が父の元へやってくるまでプランツドールになど全く興味の無かったものだから付け焼き刃の知識しかない。 「……」 仕方ない、あの店員に聞くしかないのだろう。 「車を」 それだけ告げ、私はソファの上で眠っている薫を抱き上げた。 |