6月18日の花:エスカロニア=気むずかしい人 上条、薫/CASSHERN |
「これはまた…」 店員の男は薫を見るなり目を丸くしてそう呟いた。 「育ってきていますね」 私は眠ったままの薫をソファに座らせて肯く。 「原因が分からないんだ」 すると店員は何かを考え込むように薫を見つめ、やがて私を見た。 「原因はどうやらお客様の方に在るようでございますね」 「私に…?」 困惑げに問い返すと、店員は薫の頬に触れる。 途端、それに導かれるように薫は目覚め、じっと店員を見上げた。 「ああ、矢張り憂いを覚えてしまった」 店員が手を放すと薫は再び眠りに就いてしまう。 「憂い?」 そうです、と店員は札を口元に当てた。 「月華、というプランツをご存知でしょうか」 「月華…あの、メランコリィの花冠を咲かせた…?」 そのヴィデオを、一度だけ見たことがあった。 育て主の愛情と悲しみ、そしてその苦悶を受けて育った美しいプランツ。 深い青の瞳と、その瞳と同じ色をした見事な「花冠」を咲かせた少女の姿を。 それとはまたケースが違っているが、一番近い例だろうと店員は告げた。 「では、成長を止めることは出来ないと」 メランコリィの花冠を咲かせた少女は枯れること無く大人になったと聞く。 「その可能性が高いかと」 「それが、私の所為だと…」 「…藤華薫はお客様の御父君のプランツだったと記憶しておりますが」 「……」 店員はすべて察しているのだろう。それ以上は何も言わなかった。 |