6月24日の花:フウセンカズラ=飛び立ち
シード/幻想水滸伝2幸せのカタチシリーズ




「シェネ!」
ガドルであり、シードとしての生に戻る決意をした彼は部屋を出て妹を呼ぶ。するとすぐに応えは返り、その姿を見せた。
「村長んトコ行ってくる」
「うん…」
何処か不安げな表情の妹に、彼は大丈夫だと笑った。
「あいさつが終ったらすぐ迎えに来っから」
ほっとしたように肯くシェネに肯き返し、彼は家を出た。
「ぁっ…」
家を出てすぐ出会った隣家の女性は、彼のその姿にはっとしたように顔を強張らせた。
シードはそれに苦笑し、村長の家へと向かう。
その僅かな道程で出会った人々も困惑の視線でシードを見ていた。
村長の家の扉をノックすると、夫人が笑顔で出迎えてくれた。
「はい、どなた…」
けれど、やはりシードの姿を見た途端、表情が強張る。
「村長に、会わせて欲しい」
中へと促す夫人の後を追い、長の元を訪れると、老人は「いつか、この日が来るとは思っていた」と告げた。
「記憶は」
「殆ど戻ったけど、今までの事もちゃんと覚えてる。命を助けてもらった事、本当に感謝してる」
すると、老人は好きでやった事だと首を振った。
「皆、始めから気付いておった。おぬしがハイランド軍の双璧、その片割れたる猛将のシードだという事は」
老人はそう視線を落した。
「だが、おぬしが記憶を失っていると知り、緘口令を布いた。その方が良いとわしらは判断したのだが…」
そして一つ、溜息を落す。
「ここを、出て行くのか」
老人の言葉に彼は「ああ」と肯いた。
「畑は好きにしてくれ。あと、シェネも、連れて行って良いか?」
「あの子はおぬしに懐いておる。その方があの子も幸せじゃろうて。だが…寂しくなるな…」
老人の言に、シードは「悪ぃ」と苦笑する。
「俺はあの戦でルルノイエ城と命運を共にすると覚悟を決めていた。けど、俺は生き残った。きっと、ハイランドが生きろって言ってくれたんだと俺は信じてる。だから、俺はハイランドの後に興った新たなる国の礎になりたい」
それに、と彼は笑う。
「あの城には、俺が居ねえといつまで経っても黙りこくってる奴が二人も居るからな」

 

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