6月27日の花:アジサイ=辛抱強い愛情
クルガン、ソロン/幻想水滸伝2、幸せのカタチシリーズ




さて、噂の二人はというと。
「クルガン」
ソロンは紅茶の残るカップをかちゃりとソーサーに戻し、向いのソファで同じように紅茶を飲んでいるクルガンに声を掛けた。
「はい」
相変わらず会話の乏しい二人だったが、毎日この瞬間には思わず口を衝いて出る思いがあった。
「……平和だな」
「……ええ、本当に」
しみじみとそう言い、再び二人は黙りこくってしまう。
時は昼の終わりを告げ、夕刻へと移ろい始めた頃。
二人はほぼ毎日この時間帯にはこうして紅茶を片手にぼけーとしている。
理由はただ一つ。
今は国王の愛息、ノアが御昼寝中なのだ。
つまり、剣術、または弓術指南役兼ノア教育係である二人にとっては安息タイム。
別に兵の指導に疲れているのではない。
彼らの疲れはほぼ八割がノアの為だった。
三歳を迎えたノアはさすがあの二人の息子だけあってかなり活発だ。
一瞬でも目を離せば走るわ登るわ落ちるわ。
幼子の大抵の目的は政務中の母親の元へ行くことなのだが、だからとナセルの元に置いておけば、今度はナセルがノアにべったりで仕事が進まずシュウの雷が落ちる。
しかも当の本人達は「ノアたんノアたん、シュウたんが怒っちゃったね〜」「きゃー!」と全く堪えていない。
更には、一度と無くベビーシッターを誰かしらに頼んでみたものの、ソロンたち以外に預けるとあのお子様は体内内蔵の癇癪玉を大爆発させてしまうので結局ソロンとクルガンが教育係となってしまったというわけだ。
そんなこんなで今日もひとまずお疲れ様ムードで紅茶を啜っていると、ばたばたと慌ただしい足音が二人の耳に飛び込んできた。
「何か…」
「大変です!」
クルガンの声を遮るように勢いよく扉が開いて青年が駆け込んできた。クラウスだ。
「どうした、クラウス」
何処からかは知らないが、とにかく全力疾走してきたらしいクラウスは肩で息をしながら、それでもそれ所ではないと言わんばかりに驚きに染まった顔で告げた。
「シード殿がっ、今っ、城門にっ…!!」
二人の表情が、クラウス以上に驚きの色に染まった。

 

戻る