6月30日の花:べニチガヤ=子供の守護神
たつき、一護/BLEACH




一護のお母さんが亡くなった。
事故だと聞いたけど、実際の所はよく知らない。
ただはっきりとしているのは、一護はもう二度とお母さんに会えないんだって事。

一護が学校に来ない。
一護のお母さんが亡くなってから、ずっと来ていない。
あたしは学校帰りに一護の家に行こうと思った。
だからいつもとは違う道を、一護の家への道程を辿っていた。
あれ。
橋に差し掛かったとき、河原に座り込んでいる子供に視線が向かった。
あれ、一護じゃん。
ランドセル背負ってる。
学校には来てないくせに。
そんな事を思いながらあたしは河原を滑るように駆け下りた。
呼びかけようとして、けれどあたしの喉はひゅっと音を立てて静かになった。
一護はふわふわと視線をあちらこちらに浮つかせながら河原を歩き回っていた。
一護。
心の中で呼びかけた声が届いたのか、一護がこちらを見た。
たつきちゃん。
母ちゃん、ここで死んだんだ。
だから、ここなら会えると思ったんだ。
オレのせいで母ちゃん、死んじゃったんだ。
だからオレ、
一護はそこまでしか言わなかった。
一護がどう続けようとしていたのか、今でもわからない。
謝りたかったのか、それとも他に何か問うべき事でもあったのか。
一護はずっと探してた。
何時間も何日もずっと河原をうろうろして、お母さんを探してた。
なあ一護、こんだけ探しても居ないって事はさ、
おばさん、きっともう天国に行っちゃったんだよ。
一護は漸く歩きまわるのを止め、じっと自分の汚れたスニーカーの爪先を見下ろして何かを呟いた。
けど、その呟きは一護を迎えに来たおじさんの声にかき消されてしまった。
おじさんと手を繋いで帰っていく一護。ずっと俯いたままだった。
おじさんはあれこれ面白そうな話をしてくれた。
だけど一護は一言も喋らなかった。あたしも何も言えなかった。
次の日から、一護は登校してくるようになった。
だけど。
一護は、笑わなくなっていた。

 

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