7月12日の花:バーベナ=家族愛 ハブ、ガース、ウォルター/ウォルター少年と、夏の思い出 |
ある時、ハブおじさんが僕に言った。 「坊ず、わしらの遺産は欲しいか」 思わずきょとんとしてしまった僕はそのままガースおじさんを見る。 ガースおじさんもハブおじさんと同じ表情をしてる。つまりいつもの仏頂面。 僕はまたハブおじさんに視線を戻して言った。 「おじさんたちの好きにして」 おじさんの眉が肩を竦めるように上下する。 だって本当にそう思うんだから仕方ないじゃない。 おじさんたちが僕に遺したいって言うなら貰うけど、全て処分したいなら僕はそれに従う。 だってさ、 「僕はもう宝物の在処は知ってるから」 おじさんたちが奇妙な表情で顔を見合わせた。 何だよ、その顔。僕が家捜しでもしたとでも思ってるの?そりゃあ金庫(あれは金庫といえるのか?)には一度だけ降りた事があるけどさ。そうじゃなくて、 「宝物は、ここにあるから」 立てた親指で自分の胸をとんとん、と叩くと、おじさんたちはまた顔を見合わせた。今度は何処か嬉しそうな顔で。 生きていくにはお金が必要だけど、それだけじゃ手に入れる事は出来ない、僕の大切なもの。 ハブおじさんとガースおじさん、老ライオンのジャスミン、たくさんの動物たち、みんなから貰った大切な、たからもの。 一番の宝物の在処は知ってるから。 だから、おじさんたちの財産はおじさんたちの好きにしてよ。 |