7月14日の花:タチアオイ=単純な愛
市丸、藍染/BLEACH




自室を出、月明かりの照らす廊下を歩いていた藍染は不意にその歩みを止めた。
「何の用だ、市丸」
「あれ、気付いてはったんですか」
藍染より数歩後ろに、市丸ギンが立っていた。
「もう少しバレへん思うたんですけど」
「それで何の用だ」
固いまま変わりの無い藍染の声に市丸はひょいと肩を竦めた。
「いややなあ、そんな警戒せんと。ちょーっと通りがかっただけですわ」
別に、と市丸の笑みが深くなる。
「おたくの副隊長さんにちょっかい出そうなんて思うてませんし」
「市丸」
咎めの色を含んだ藍染の声に、市丸がつい、と歩み寄った。
「あのコがホントウに大切みたいやねえ?五番隊隊長サン」
あと半歩で衣が触れ合う所まで近づいた市丸は更に笑みを深くする。
「ボクの時とは違って」
藍染が微かに眉根を寄せた。
「アナタの隣はあのコにあげてもええけど」
藍染の胸元の袷に這う市丸の手は、緩やかに首筋へと上っていく。
「アナタはボクのもんやから、取り返す事にしたんや」
利手に握られた斬魄刀。
藍染は一瞬己の斬魄刀に手を伸ばしかけ、けれどもその腕が持ち上がる事はなかった。
「さよならやのうて、おかえりやな」
市丸の場違いなほど明るい声を聞きながら、藍染はそっと目を伏せた。

 

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