7月15日の花:ウイキョウ=力量
市丸、雛森/BLEACH




雛森が藍染の部屋へと向かう途中、手摺の上に腰掛けている市丸に気付いた。
(市丸隊長だ…やだなあ…)
雛森は市丸ギンが余り好きではない。どうも苦手なのだ。
だからと仮にも三番隊隊長である市丸を無視するわけにも行かないので、雛森は軽く会釈をして足早に通り過ぎようとした。
「副隊長サン」呼び止められた。
「は、はい!」
まさか呼び止められるとは思ってもみなかった雛森は飛び上がらんばかりに驚いて足を止めた。
「そこからの景色はええモンやと思わん?」
「え?」
そこ、というのは今自分が立っているこの場所の事なのだろうか。
「そこから見上げるんは気持ちええもんなァ」
見上げたって何の変哲も無い空が広がるだけだ。益々意味が分からない。
「あ、あの…?」
「ちょっと前までボクの場所やったんやけど」
困惑げな表情で市丸を見るが、彼に説明する気はないらしく、一方的に話すばかりだ。
「勿体無かったけど、まァ、その代わりに同じトコに立てたし」
「はあ…」
「やからそこはキミにくれたるわ。ただ、」
市丸の笑みが深くなる。
「あの人は返してもらいますわ」
背筋を薄ら寒いものが走り、雛森は咄嗟に己の斬魄刀に手を掛けた。
「!」
だが、既に市丸の姿はもう何処にも見当たらなかった。
「…っ…」
強く握っていた斬魄刀の柄からぎこちなく手を放し、雛森は微かに震える己の手を強く握り締めた。

 

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