7月23日の花:ホオヅキ=あざむき
京楽、藍染/BLEACH




「惣右介くん」
月に一度の定例隊首会の後、声を掛けられた藍染は足を止めた。
「京楽さん」
八番隊隊長・京楽春水がひらりと藍染に手を振っていた。
「良かったらこれから、どうだい?」
手で軽く示された猪口の形に藍染はすみません、と苦笑する。
「今夜、所用が在りまして…また今度お願いします」
「何だい、つれないなあ」
残念そうに肩を竦める京楽に藍染はもう一度すみません、と謝罪する。
「お気に為さる事はありません、藍染隊長。京楽隊長にお時間が在るのは本来やるべき仕事を怠っている為の事ですから」
自業自得です、と切って捨てるのは彼の副官の伊勢七緒副隊長だ。
「七緒ちゃあ〜ん、そんなさみしぃコト言わないでよぅ」
途端情けない声を出す京楽に七緒は視線も向けないまま、伸ばされた腕を扇子で叩き落とした。
「とにかく、藍染隊長がお気になさる事はありません」
二人のやり取りに藍染はくすりと笑い、ありがとうと七緒に微笑った。
「ところで惣右介くん」
「はい」
「何だか知らないけど、独りで抱え込むのは良くないよ?」
藍染の眼が大きく見開かれる。
だが、やがてそれは穏やかな笑みへと姿を変えた。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
京楽はじっとその穏やかな微笑みを見詰めてみたが、やがて「そう?」と笑った。
「じゃあ、また今度呑もう。約束だからね?」
「ええ、是非」
それでは、と踵を返して去っていく藍染の後ろ姿を眺めながら京楽は小さく呟いた。
「…嘘はいけないなあ」
あんなに辛そうな顔をして。
「隊長?」
「ん?いやいや、何でもないよ。さ、行こうか七緒ちゃん」
「どさくさに紛れて肩に手を置かないで下さい」
藍染の副官が小走りに彼に駆け寄るのを尻目に、京楽も彼らに背を向けて歩き出した。

 

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